「農民」記事データベース20170612-1266-01

「公的サポート」モデル事業
県独自に1万5千円(10アール)

戸別所得補償制度の復活を

新潟県知事 米山隆一さんに聞く

 新潟県は2017年度から、県独自の施策として、経営環境が不利な中山間地域の農業者を支援する「公的サポート」モデル事業を新規に実施しています。米山隆一知事は昨年10月の知事選で、「福島の検証が終わらない限り原発再稼働の議論はしない」「TPPから新潟県の農業を守る」などと並んで、「戸別所得補償の復活」を公約に掲げていました。今回の事業は公約実現の第一歩であり、新潟県だけでなく全国の農家にとって大きな“希望”です。米山知事に聞きました。


 米山隆一(よねやま・りゅういち) 1967年、新潟県北魚沼郡湯之谷村(現魚沼市)生まれ、49歳。幼少の頃、実家の養豚業を手伝う。医師。弁護士。2016年10月の知事選挙で共産、社民、自由などの各党と市民団体が推薦。自民、公明などが推薦する候補を破り、初当選。


全国の農家に大きな“希望”

 私は、農業の維持・発展のためには、大きな意味で、所得を保障する制度が必要であり、国は価格政策から所得政策に転換していくことを考えるべきだと思います。ただし、過去の戸別所得補償制度をそのまま復活させるのではなく、そのエッセンスは残したまま、営農条件に応じた所得保障ができるようにするなど、過去の教訓を生かした制度としていくことが必要だと思います。

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米山知事(中央)と新潟県農民連の鶴巻純一会長(左)、倉島良司副会長

 国にも構築を働きかけたい

 財源が限られるなかで、県のできる範囲としては、営農条件が一番不利な中山間地などで他産業並みに所得が確保されるよう、「公的サポート」モデル事業を実施することにしました。今後、経営発展の効果などを検証したうえで、これがうまくいけば国にも農家の所得を保障する制度の構築を働きかけていきたいと思います。

きちんと補償すれば
安定的生産につながる

 中山間地農業を支えるためにも

 世界のすう勢としてある種の市場開放は避けられないなかで、これに対抗するためにも所得政策は必要だと思います。さらに、国が農業の大規模化を進めているもとで、適正な規模拡大には賛成ですが、大規模な農業を支援するだけでは中小規模が大半の中山間地などの農業が立ち行かなくなってしまいます。中山間地域を支えるためにも、そこで人が暮らせるようにしていくことが大事です。

 2018年度から、行政による生産数量目標の配分が廃止され、価格の不安定化が懸念されるなかで、きちんと所得を保障していくことが計画的で安定的な生産につながり、農業に携わる人に公正にお金を配分することになります。そうすれば、豊作になって、多少余剰米がでても良くなります。生産者にとっても消費者にとっても幸せなことです。

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田植え直後の田んぼの向こうの朝日連峰・鷲ヶ巣(わしがす)山から昇る朝日(新潟県村上市、撮影:竹内喜代嗣さん)

 次期総選挙ではひとつの争点に

 確かに所得を保障する制度を実施するためには、膨大な予算がかかりますが、これは本来国がやらなければならない政策です。次期総選挙では、農村地域で戸別所得補償制度が一つの争点になると思います。

 県の予算の関係で、事業の対象は3件だけですが、今後、うまくいけば対象を増やしたいと考えています。米は日本農業の根幹です。新潟県は一番の米どころであり、地域の誇りです。野菜・果樹もありますが、多くは米との複合です。米農家がいなくなれば、野菜・果樹も減ってしまいます。そこはしっかりと守っていきたい。そのためにも安定的に生産できる仕組みをつくることが重要です。

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新潟のブランド品種「新之助」の田植えをする米山知事(右から2人目)=5月21日、妙高市(新潟県提供)

 制度の実現へ大いに発信を

 農民連のみなさんが全国で、「戸別所得補償制度の復活を求める署名」活動に取り組んでいるということですが、農業に携わるみなさんが、自分の思いを国や政治に反映させることは大事なことだと思います。自らが求める制度の実現へ大いに発信してください。新潟県農民連が取り組んでいる農家アンケートの結果もぜひお聞かせください。


 「公的サポート」モデル事業 営農条件が不利な中山間地域でも、農業で他産業並みの所得が確保できるよう、集落営農組織などに10アール当たり1万5千円を上限に支給する。3件(100ヘクタール)を対象に3年間継続し、経営発展の効果を検証したうえで、国に仕組みの創設を提案する。事業の対象は、急傾斜農用地が過半を占める地域の集落営農組織や中山間地域等直接支払制度の対象地域。

(新聞「農民」2017.6.12付)
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2017年6月

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