「農民」記事データベース20170605-1265-05

都会から若者が移住

20〜30代の担い手
農地の1割を耕す

福井・若狭町


町をあげて担い手確保へ
かみなか農楽舎

 町が積極的に

 米単作地帯で20〜30代の新規就農者が15年間で24人定住し、町内の農地の1割以上、230ヘクタールを耕作し地域農業を支えている――福井県南西部の若狭町、かみなか農楽舎を紹介します。

 後継者不足に悩んでいた若狭町では、都会からの就農希望者の受け皿として、2001年に町や地元農業者、賛同する企業が出資した「かみなか農楽舎」を設立しました。町が50%を出資。コミュニティー施設や体験農場などの拠点となる施設を持つ農村総合公園(4・2ヘクタール)を整備するなど、町が主体的に取り組みを進めています。かみなか農楽舎の職員、八代恵里さんは「森下裕町長が産業課長時代に始めた事業ですが、『人は財産。この人を育てなければ』という町長の思いがあり、積極的な支援を頂いています」と話します。

 かみなか農楽舎は農業と農村地域の再生、地域づくりを目指して都市からの若者の就農・定住を促進し、集落を活性化しています。活動内容は、就農・定住研修事業、インターンシップ受け入れ事業、農業生産事業、直販事業、体験学習事業の5つです。それぞれが連携し新規就農者の定着を図っています。

 新規就農希望はインターンシップへの参加後、1年目は研修指導者の直接指導を受けながら、農業の基本をマスターし、町での生活に慣れていきます。2年目は就農に向けた準備期間として、水稲を中心に4ヘクタールほどのほ場を借り受け、現場責任者として、生産計画から販売まで担っていきます。

地域になじむことも重視して

 ポイントは?

 この取り組みのポイントはどこか。八代さんは「単なる農業経営の研修ではなく、田舎暮らしをすること、この町で暮らすことの価値を伝えていることではないでしょうか」と語ります。

 地域の集落内でのコミュニティーの研修を行い、卒業生が集落にスムーズに受け入れられるよう、草刈りなど集落総出の作業や、行事(運動会、伝統行事等)、消防団活動などに参加し、地元集落の一員として受け入れてもらえるようにしています。

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田んぼの溝切り作業の様子

 「相性」を重視

 また「親方」となる農家とのマッチングを重視しています。「後継者のいない認定農家がいる」「担い手が地域にいない」といった情報をもとに、研修生と農家、地域を引き合わせています。ある程度の耕作面積を確保でき、機械も貸してもらえることなどの条件と合わせ、何よりも「相性が合う」ことが確認できると、卒業後にその地域に入ることになります。

 「まだ、ほとんど農作業ができなかったにもかかわらず、地域の人たちが『田んぼをやってくれるのか。ありがとう』『ぜひ残ってくれよ』と声をかけてくれました。時には叱ってくれることもあり、本当によくしてもらったので少しでも恩を返したいとの思いで定住し、農楽舎に勤めることにしました」。自らも研修生だった八代さんが話すように、地域の人とのつながりをつくっていることが、定住してもやっていけるという原動力となっています。

住民から「ぜひ残って!」

 地元農家と法人を立ち上げ、代表権を譲られる人など、地域でも信頼される農業者がかみなか農楽舎から育っています。15年間で42人の研修生を受け入れ、24人が町内に就農。結婚、出産などもあり、現在は21世帯、63人になっています。

 また地域の農家の子どもが、卒業生の姿を見て自らも就農する、という動きも起きるなど、地域を守る担い手育成に、大きな役割をかみなか農楽舎が果たしています。

(新聞「農民」2017.6.5付)
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2017年6月

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