温暖化が食卓を直撃?ポテチが棚から消えた…
北海道台風(昨夏)禍で
「原料の国産ジャガイモが調達できず、ポテトチップスの販売を一時休止します」――今年4月、こんなニュースとともに、全国のスーパーやコンビニの店頭からポテトチップスがいっせいに姿を消しました。原因は、昨年の夏に北海道を襲った長雨と3つの台風で、ジャガイモ生産が大打撃を受けたこと。気候変動が農作物の不足となって、食卓に影を落とし始めています。 |
空っぽのポテトチップス売り場と休売のお知らせ(4月中旬、都内のコンビニ) |
道内では河川が氾濫して流された畑も多く、ジャガイモは土寄せしながら育てるために、畝の間にできた深い溝に雨がたまって、地中で腐るなどの被害が相次ぎました。「出荷量は1割減と道はいうが、被害はもっと大きかったのでは」と森浦さんは言います。
さらに今回の不作の原因となった「雨の降る量」と「雨の降り方」に着目すると、1970年代以降、「雨の降る量」の少ない年と多い年の差が大きくなっています。また「降り方」も一度に大雨が降る傾向に変わってきており、今世紀末には、こうした大雨や長雨が増加する傾向がさらに深刻になるという研究報告が相次いでいます。
その国産が不作なら輸入で手当てすれば…と思いきや、「メーカーは国産志向」(日本スナック・シリアルフーズ協会)だといいます。というのも、生鮮ジャガイモの輸入には検疫による規制があるほか、「ぶつかったときに変色してしまうなど、商品化できる歩留まりが悪い」(同協会)からとのこと。カルビーによると、「ポテトチップスの“命”は揚げ上がりの“色”。美しいキツネ色に揚げるには傷の少ない国産で、糖度が低く、ポテトチップスに向くトヨシロなどの専用品種であることが大事」なのだといいます。
しかし、北海道の気温上昇(とくに夏の)による減収、重労働ゆえの作付面積の減少などからポテトチップス用生鮮ジャガイモは恒常的に不足気味で、06年の輸入解禁以降、その量はうなぎ上りで拡大しています。
WSJは、日本の植物検疫制度を「偽りの主張に基づく保護貿易主義の一環」と決めつけ、「そうした非関税障壁のせいで米国産ジャガイモの売り上げが抑えられてきた」と非難。「TPPに参加していれば輸出額が5倍に拡大したと見積もられるのに、こうしたうまみのあるチャンスはトランプ大統領のTPP離脱で失われた」とまで書き連ねています。
しかし、TPPなどなくても、日本のジャガイモ輸入量は着々と増えています。しかも、輸入量の8割を占めているのはアメリカ産で、冷凍が最も多く、乾燥、生鮮、調製品などに類別されて輸入されています。
生鮮は、全量がポテトチップス用で、北海道の端境期である2〜7月に限って輸入が許可されており、産地もシストセンチュウなどが発生していない地域(14州)に限定。そのためアメリカ最大産地であるアイダホ州からの輸入は認められていません。日本での加工施設も港頭地域内になければならないとされていることから、カルビーの広島工場と鹿児島工場にほぼ限定されています。
つまり、両紙はこうした日本の検疫制度が気に入らない、と言うのです。しかしシストセンチュウは、ジャガイモの生産に壊滅的打撃を与える、病害虫のなかでももっとも恐ろしいものの一つで、そのまん延防止には万全の対策が必要なのは明らかです。
さらに、米国産ジャガイモにはポストハーベスト(収穫後の農薬散布)の問題もあります。現在のところ、一応、日本向けには使用できないことになっていますが、アメリカでは収穫後のジャガイモに直接クロルプロファムという発芽抑制剤を噴霧するということが行われています。
またアメリカでは遺伝子組み換えジャガイモもあり、研究開発には毎年何億円もの連邦予算が投じられています。
[2017年6月]
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