地域の話題
あれこれ
長野県
菊池敏郎
桃・梨の開花、野菜の定植…
信州に広がる春の便り
遅霜の心配もしながら作業
2月に標高270メートルの長野県南部で梅の開花が始まり、その後南から北へ、低暖地から標高1300メートルの高冷地へと春の便りが訪れます。3月下旬に果樹地帯では梅に始まり、アンズ、桃、梨、リンゴと白からピンクと開花が続きます。
その後、野菜の定植と稲作の準備が始まり、農地は緑へと変わっていきます。この時期は、遅霜の心配もあり、果樹園ではかつて重油などを焚(た)き、周りの住民とトラブルもありましたが、現在では「防霜ファン」が回っています。露地野菜の地域では、網状のフィルムでの被覆が主流です。
平野部以外では果樹や野菜中心
長野県民は「信濃の国」を歌います。満州開拓に多数の人を送った反省から、学校では「君が代」でなく、県歌を歌ったと聞きました。この歌詞にある松本、伊那、佐久、善光寺平や千曲川と天竜川の流域では米作中心です。平野部以外では、果樹や野菜中心です。最近では、巨峰をはじめシナノパープル、シャインマスカットなどの大粒ブドウの栽培も盛んです。
私の住む原村は、八ヶ岳山麓の標高950メートルから1200メートルに農地があります。梅と桜は4月中旬に同時に咲きます。南に富士山と南アルプス、東に八ヶ岳、北西に伊那山脈と北アルプス、北には霧ケ峰、美ヶ原高原が見える畑作中心地域です。
冬は氷点下20度になります。露地野菜中心でセロリ、ブロッコリーが増えています。ハウスホウレンソウやパセリ栽培も盛ん。また、紫外線の強さを生かし菊やカーネーション、スターチスなどの切り花も盛んです。
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セロリの定植風景(長野県原村) |
セロリやパセリ全国的にも有名
これらの野菜や花は、農協の営農指導員が中心となり、地域に合う品種の育種と試験を繰り返した結果です。特に、セロリとパセリは全国的にも有名です。農協中心に、行政と生産者が共同した「野菜の価格保障制度」が生産を後押しし、高齢者も生きがいを持って働き、就労率は全国トップクラスです。
政府による農協つぶしが進められていますが、生産農家にとっても地域住民にとっても農協は欠かせない存在となっています。
(新聞「農民」2017.5.29付)
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