畜産経営安定法
改定案の問題点
指定団体制度の骨抜き
農業を企業の食い物に
アベノミクス農政への一里塚
安倍政権が今国会での成立をめざす「農業競争力強化プログラム」関連8法案のうち、生乳の生産・流通制度に関する「畜産経営安定法」改定案(以下、改定案)が衆議院に提案され、審議が進んでいます。
提案されている「改定案」の内容は、
(1)これまでは酪農協や農協連などの指定団体を通じて出荷された生乳にのみ交付されてきた加工原料乳の補給金を、年間販売計画を農水省に提出し承認を受ければ、指定団体以外の販売業者にも交付するようにする
(2)「(酪農家からの)販売委託を拒否しない」旨が定款に明記された団体を「指定生乳生産者団体」や「指定事業者」に指定し、集送乳調整金を交付する
――というものです。
交渉で弱い立場
生乳は毎日生産される一方、腐敗しやすいことから生産してすぐに乳業メーカーに引き取ってもらう必要があるため、価格交渉では酪農家が弱い立場になりがちです。
こうしたことから指定団体には、(1)より多くの酪農家の生乳の販売委託を受けることで、酪農家の価格交渉力を守る、(2)効率的な輸送ルートの設定による集送乳コストの低減、(3)日々変動する天候や需要などに応じて、需給・生産調整する、などのきわめて重要な役割があります。
加工原料乳補給金を、指定団体を通して販売した生乳にだけ交付するという仕組みは、指定団体に酪農家からの委託販売を集中させるはたらきがあり、協同組合の原則に基づいて行われている現在の一元集荷・共同販売を守る制度でもあるのです。
猛反対の世論が
生乳の生産・流通制度改革をめぐっては、規制改革推進会議の前身、規制改革会議が昨年、「酪農家の選択肢を増やす」というふれこみで、「指定団体制度の廃止」や「加工原料補給金の交付対象の見直し」などを盛り込んだ「提言」を発表。その後、全国の酪農家や農協、酪農団体、乳業団体から「安定供給の根幹を壊す」「酪農家の団結を弱め、買いたたきを助長する」など、猛反対する世論が巻き起こり、結局、今回の「改定案」には「指定団体制度の廃止」という文言は盛り込まれませんでした。
しかし今回の「法改定」が、指定団体制度の骨抜きにつながるものであり、規制改革推進会議のめざす“協同組合をつぶして農業を大企業の食い物にする”アベノミクス農政への一里塚であることは明らかです。「酪農家の団結を壊すな」「買いたたきを許すな」の声を、より一層、大きくしていくことが求められています。
(新聞「農民」2017.5.29付)
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