主要農作物種子法廃止法案
参院農水委参考人質疑から
農民の権利を支えた種子法
廃止は種子の公共性を否定
龍谷大学教授 西川芳昭氏
主要農作物種子法(種子法)廃止法案が4月13日、参院農水委員会で参考人質疑が行われ、同日可決され、翌14日に本会議で可決・成立しました。参考人の西川芳昭・龍谷大学教授の意見陳述の大要を紹介します。
種子は公共のものであり、個人・特定の企業が所有するものではありません。すべての人・農家は種子にアクセスする権利を保障されるべきで、その考え方を表しているのが種子法だと考えます。
「種子が消えれば、食べ物も消える。そして君も」。これはスウェーデンの元ジーンバンク担当者の言葉です。また、国連食糧農業機関(FAO)は、「土壌、水、そして遺伝資源(種子)は農業と世界の食料安全保障の基盤を構成している。これらのうち、最も理解されず、かつ最も低く評価されているのが植物遺伝資源である。それは、またわれわれの配慮と保護に依存している資源でもある」と警告しています。
種苗法の目的は、「品種の育成の振興と種苗の流通の適正化」であり、知的財産権の保護です。一方、種子法は、「主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進」するものです。
種子法は、第2次大戦後の食料不足のなかで、国の自給率を上げていくこと、すべての者が飢餓から免れるための必要な措置をとることを目的に制定されました。
種子についてのシステムは、政府機関の管理のもとに供給される、主として改良品種の認証に関わるフォーマルな制度と、農家自身による採種や農家同士の交換による認証されない在来品種の種子の供給を担うインフォーマルな制度で成り立っています。日本では、種子法によって両システムが連携しています。
種子に関しては、(1)生物多様性条約、(2)農業食糧のための植物遺伝資源国際条約、そして(3)植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV(ユポフ))が並存しています。
種子法は、国際的規範である「農民の権利」を支えてきました。種子法の廃止によって、農民が種子に自由にアクセスすることを許さない企業の論理が働くのではないかと懸念しています。
国民と食料の問題として、国家レベルの農業・食料需要など量的視点から科学技術の導入による生産の増大などをめざす食料安全保障と、国家、国民、農民が自主的に食料に関わる意思決定を行う権利、つまり食料主権があり、この両者が相互に補完的な関係にあることが大事です。しかし、両者のバランスを欠いているのが今の農業政策の問題点です。
(新聞「農民」2017.4.24付)
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