ふるさと壊した責任を
国と東電は認めよ!
「生業を返せ、地域を返せ!」
福島原発訴訟が結審
東京電力福島第一原発事故の被害者約4000人が、国と東電に原状回復と損害賠償を求める「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(以下、生業訴訟)が3月22日、福島地裁で結審しました。原告団には、福島県農民連の会員も約400人が加わっており、原告団事務局などで大きな役割を果たしています。
21日の最後の口頭弁論では、4人の原告が意見陳述しました。事故当時妊娠中だった2人の子を持つ福島市の若い母親は、「昨年のお正月に県外で親せきの子どもが集まった折に『こんどは○○ちゃんの家に遊びに行きたい』と言われ、娘は喜んでいましたが、別の子から『放射能があるからダメだよ』と言われ、娘は黙って小さくうなづくだけでした。その悲しい表情に、胸が締め付けられる思いでした」と述べました。
二本松市東和町でスーパーを営む原告団事務局長の服部浩幸さんは、周囲に食料品店もないなかで避難はできなかったこと、しかし昨年の甲状腺検査で子どもたちから小のう胞や結節がみつかり、親としての強い自責の思いを語り、「全被害者が希望を持って生きられる社会が実現するまで、私たちは訴え続けます。裁判所は人類のおかした過ちを認め、その後押しをしてほしい」と訴えました。
判決は、10月10日に言い渡しの予定です。
結審日には、公判前集会、福島地裁へのデモ行進、俳優の宝田明さんの講演会、法廷を再現した模擬裁判などが行われ、原告や支援者のほか、全国公害被害者総行動実行委員会や全国の原発差し止め訴訟の仲間など約1000人が参加しました。また4万人分を超える「公正な判決を求める署名」を提出しました。
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横断幕を掲げ、福島地裁を目ざして市内をデモ行進する原告ら |
報告集会では、原告団長の中島孝さんが「結審が終わりではない。6月には第2陣提訴の公判も始まる。ひきつづき署名を100万人分を目標に集めるとともに、支援を求める取り組みをさらに強め、あらゆる被害者が救済されるまでがんばっていこう」と呼びかけ、力強い「団結がんばろう!」で閉会しました。
農業の喜び奪った原発事故
果樹農家 橋本光子さん(福島市)
夫と2人で、2ヘクタールの畑で桃とリンゴを作り、お客さんに「おいしい」と言ってもらえるのが何よりの喜び、励みでした。しかし原発事故で農業は大きな被害を受け、農業一筋だった夫は絶望してうつ病になり、リンゴの木は切らざるをえませんでした。農地は今も汚染され続けており、若い人は長時間農作業するなと指導されて、後継者が農業を継ぐのも難しくされています。リンゴ畑の後には原発への怒りを込めて、太陽光パネルを設置しました。
声あげる事が次世代への責任
果樹農家 阿部哲也さん(福島市)
農民は、農地を次世代に引き継いでいかねばなりません。その農地を原発事故は汚した。この怒り、悔しさを、福島の農民が黙っていてはいけない。こんな事故を二度と起さないために、被害者として声をあげ続けることが次の世代への責任だと思い、原告になりました。生まれたばかりの孫に、いつの日か、「じいちゃんはがんばった!」と言えるようにしたい。
(新聞「農民」2017.4.3付)
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