「農民」記事データベース20170313-1254-09

がんばって生産を続け
若い世代につなげよう

第19回大豆畑トラスト運動全国交流会
大阪

関連/菜種トラストに取り組んで

 遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンは2月17日、大阪市の秀明神崎研修センターで、遺伝子組み換え(GM)大豆を拒否し、国内の自給率を高めることをめざす「第19回大豆畑トラスト運動全国交流会」を開きました。山形、茨城、千葉、福井、大阪、兵庫などから生産者が集まり、消費者とともに1年間の労をねぎらいながら、今年の作付けへの決意を新たにしました。


 ランチ交流会で開会。煎(い)り大豆ごはん、エビ豆煮、大豆とマカロニのトマト風味、おから100%クッキーなど、秀明自然農法ネットワークのみなさんが調理した大豆づくしの料理でおなかを満たしました。

 アメリカでも初めて栽培減少

 キャンペーンの天笠啓祐代表が、「遺伝子組み換え食品の20年、何が変わり、何が起きてきたか?」をテーマに講演。栽培面積を毎年伸ばしてきたGM作物が、2015年に初めて減少、「アメリカでの減少が大きい。『GM食品はいらない』という消費者による反対運動の高揚の結果」と述べました。

 最近の動向として、日本で流通している作物は大豆・トウモロコシ・綿・ナタネで、食用油・油製品・飼料が中心、その性質は除草剤をまいても枯れないものと殺虫性の2つであるものの、除草剤の種類と量が増加していることを報告しました。

 さらに、世界ではサケやリンゴなどへのGM技術の応用が始まるなか、健康への悪影響を指摘する動物実験なども相次いで発表されていることを紹介しました。

 日本から大豆が消えないように

 リレートークでは、各産地から報告があり、千葉・東総農民センターの寺本幸一さんは、畑の上にソーラーパネルを設置するなど太陽光発電をしながら、大豆づくりを展開していることを写真で示しながら語り、「大豆づくりをやめてしまったら外国産のGM食品を食べることになる。日本から大豆がなくならないよう応援してください」と訴えました。

 福岡・みのう農民組合の金子徳子さんは、大豆畑トラストが今年20周年を迎え、記念イベントを計画していることを報告しました。

 兵庫県農民連の橋本早苗さんは、転作田を引き受けることで栽培面積が増え、近所のお母ちゃんたちも大豆づくりに参加するようになってきたことを紹介。消費者にも喜ばれることで、やりがいにつながっていると語りました。

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報告する兵庫県農民連の橋本さん

 秀明の若い生産者たちも報告し、「大阪は大豆と麦が自給率ゼロ%といわれているので、唯一の生産者としてがんばってつくり続けたい」「シカに作付けの半分を食べられてしまった。つくるのに精いっぱいだが、消費者に支えられてがんばっている。若い世代につなげたい」など、力強い決意が出されました。

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大豆たっぷりのランチ

 大豆生産者を支える消費者

 消費者からも「遺伝子組み換えでないトラストの食品を子どもたちに食べさせたい」と期待が語られました。

 最後に、天笠代表が「生産者を支えるのは消費者。今日のことをほかの人たちにも伝えて、大豆畑トラストを日本の運動の柱にしよう」と閉会のあいさつをしました。


菜種トラストに取り組んで

福岡・みのう農民組合 金子徳子

 ナタネの栽培をはじめたきっかけは

  京築農民組合からナタネ栽培教わり
 福岡県久留米市北野町に住む、米と野菜農家の山口常博さん(72)は、菜種トラストを始めた京築農民組合の木元正見さんから、12年ほど前、ナタネの栽培を教わりました。始めは1反2畝に作ってみました。

 できはとても良かったのですが、収穫は手で刈って、手で打って、うきは市吉井町にある安武製油所にもって行って搾ってもらいました。近くに、焙煎(ばいせん)圧搾法にこだわる製油所があったということは、非常な幸運でした。

 翌年から機械で刈り取り作業ができることがわかり、一挙に面積を広げ、昔ながらの油の愛好者に支持されていきました。

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菜種トラストの参加者たち

京築農民組合からみのう農民組合へ

  遊休地を利用して栽培面積を広げて
 2013年、京築農民組合が菜種トラストを続けられなくなり、みのう農民組合に続きを託されました。山口さんが、「ぼくがやろう」と言ってくれたからです。田んぼの利用が減ってきており、遊休地を利用して面積を広げていました。

 私たちが始めた菜種トラストは、「1口5000円で、10坪から取れる菜種油を受け取る」というものでした。消費者との交流は、4月初めに菜の花の花見を行っていました。そして、8月ころ、会員に、一口につき920グラムのペットボトル3本の油と、1キログラムの一番搾りの油かすと相性の良いにんにくをつけて送ることができ、大変喜ばれました。第1回は、70口でスタートし、16年は100口を超えるまでに成長しました。同時に行っている大豆畑トラストの影響も大きいです。

 2016年は収穫少なく品質も悪い

  会員のみなさんから応援・励ましの声
 16年の作付けは、2町2反。しかし、1町1反は草に巻かれ、ナタネは1200キログラムしか採れず、しかも品質も悪く、安武製油所に「油含有率が25%ぐらいしかなく、単独では搾れない」と言われました。結局、他の油と混じった油が395本できましたが、これを会員さんに配分するわけにもいかず、役員会を開いた結果、次のように決まりました。

 会員さんにありのままを伝え、選択肢を次の4つにして、選択してもらうというもの。(1)事務手数料を引いて返金、(2)来年のトラストまで受け取りを延期、(3)ぶどう、梨、柿で受け取る(4)新米で受け取る――。以上のことを書いて、会員のみなさんに送りました。10日ほどで全員から返信が来ました。

 「来年のトラストまで延期」という方が一番多く、28人39口となりました。

 そしてそのはがきには、「残念です。でも自然相手ですから、仕方ないです。今後も応援しています」(熊本市の女性)、「種まきと草取りに行きます」(福岡市、女性)などと書かれ、全員が、応援、励ましの声でした。本当に心が熱くなりました。

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安全・安心な菜種油

 GM作物作らない運動もっと大きく

 昨今の気候、異常気象などを考えると、今後も起こりうることと思います。トラスト運動として、対応は本当にこれでよかったのか、疑問は残ります。

 大豆畑トラストは、19年やってきて、「トラスト運動は産直とは違う。もし、まったく収穫できず、会員さんへの配分がなくても、文句を言ってはいけない」と言ってくださる会員さんもおられますが、実際そうなってみると、心情的に難しいものがあります。

 今回のことから、よい教訓を引き出して、遺伝子組み換え作物を作らない運動を、その意義とともに、もっと大きくしていきたいと思います。

(新聞「農民」2017.3.13付)
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2017年3月

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