農民連食品分析センター
2月から新機器が稼働
ネオニコチノイド系7種
農薬いっせい分析受付開始
農民連食品分析センターは新機器を導入し、2月から検査を開始しました。導入したのは「高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS/MS)」です。分析センターが今まで検査ができなかった農薬を検査対象にでき、農薬検査には必需品ともいえる機器です。今回の導入で残留農薬検査については、一般の分析機関とそん色ない設備が整ったことになります。
新機器について、分析センター農薬検査担当の仲前聡さんは「新機器の最大の特徴は高感度で不純物の影響を受けにくい検出が可能だという点です。似たような物質でもきちんと区別して検出することができます。また、新しく一斉検査の対象を増やすことも今までより容易になりました」と話します。
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新機器、LC/MS/MSを操作する仲前さん |
八田純人所長も「今回の新機器は、もともと2001年に私たちが冷凍ホウレンソウから基準値違反の残留農薬を検出したことから、検査業界に爆発的に広まり、一般的な機器になったものです。今までは、せっかく私たちを頼ってきた会員さんの力になりきれず申し訳ない気持ちがずっとありました。ようやく胸のつかえがとれた気がしています」と思いを語ります。
多くの商品に含まれる
使用している状況の把握を
米・果樹・野菜に園芸用肥料にも
今回、検査が始まったのはネオニコチノイド系農薬7種類の一斉分析です。この7成分は日本で認可されているネオニコチノイド系農薬の典型的なものです。表1は7成分が含まれる代表的商品です。
ネオニコチノイド系農薬は、浸透移行性が高く、作物の内部に殺虫成分が長期間残留するため、効果が持続します。粒剤でも散布でき、稲のカメムシやリンゴ、ナシ、ミカン等の果樹や野菜のアブラムシ等の防除に広く使用されています。
日本では高齢化や大規模化に伴う効率化の流れの中でメリットがあるとして使用が拡大しています。なじみのある既存の商品にも混合され、知らないうちに使用していることもあります。
家庭園芸用の殺虫剤や肥料にも用いられ「栄養を与えながら害虫駆除。害虫も防ぐ画期的な肥料」などの売り文句で販売されている商品もあります。
一方、ヨーロッパなどでは、ミツバチの大量死(蜂群崩壊症候群)の原因と疑われ、安全性に対する議論が高まっています。
日本の農水省も13年から3年間、「蜜蜂被害事例調査」を行い、16年7月に報告書を出しています。このように環境への影響が議論されている農薬でもあります。そんななか国は、15年に残留基準値を食品の国際基準(CODEX(コーデックス))よりも緩和しました。(表2)
消費者の関心が高まりつつある中で、埼玉産直センターでは、ネオニコチノイド系農薬の残留検査を行い、成績書を出荷先に送っています。
専務理事の山口一郎さんは、検査を行っている理由について「安全・安心な農産物を担保するために、検査できるものはすべてデータをつけるという方針で、ネオニコチノイドについても検査しています」と説明。「分析センターで検査ができるのであれば、検査依頼を出していきたい。ほかの産地もどんどん活用してほしい」と話します。
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右のようにネオニコチノイド系農薬が検出されます |
八田所長は「生産者も無関心ではいられない現状があります。みなさんがなじみのある多くの商品にネオニコチノイド系が含まれています。まずは表をチェックして自分の使用している農薬に、ネオニコチノイド系の成分が含まれているか確認してみてください。そして検査を利用して残留の程度を把握し、安全・安心な栽培に役立ててください」と呼びかけています。
生産者と消費者のためのセンター
積極的に活用してほしい
検査依頼出せる期待の声とどく
現在、分析センターでは、市販のトマトの残留状況を調査しています(結果は近日中に掲載予定)。仲前さんは「まだ調整中の部分がありますが、測定の信頼性を高めて、正確なデータを提供していきたい」と全力で取り組み中です。
八田所長は「新機器導入で『これでやっと検査依頼が出せる』という期待の声がすでに産直センターからも届いています。分析センターは生産者と消費者の両方を守るため、私たち自身が持つ施設です。ぜひ活用をお願いします。また新機器導入には一部借入金に頼らざるをえなかったので、引き続き機能強化募金にもご協力をお願いします」と訴えています。
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分析機器導入募金振込先
郵便振替口座
口座番号 00160―6―773542
加入者名 農民運動全国連合会分析センター
(新聞「農民」2017.3.13付)
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