日本とEUのEPAを考える
食健連が緊急学習会
市民の力でTPP阻止をかちとる
TPPの水準で 日米FTA合意を危惧
全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)は2月1日、都内で「日本とEUのEPA(経済連携協定)を考える緊急学習会」を開きました。
勝利を喜びたい
東京大学の鈴木宣弘・東京大学大学院教授が「TPP闘争勝利と『TPPプラス』の日欧・日米FTAの断固阻止」のテーマで報告しました。
トランプ米大統領がTPPの永久離脱を宣言したことに対し、「市民の力でTPPが悪いものであることを証明した。勝利を喜びたい」と切り出しました。
一方で、トランプ大統領が「米国最優先」「他国の負担を増やすことで米国産業の利益と米国民の雇用を取り戻す」と主張し、日本が一層譲歩させられる日米FTA(自由貿易協定)が成立することになりかねないことに危惧を表明しました。
さらに、日欧FTAも、TPPの水準をベースに乳製品などで「TPPプラスα」で大筋合意しようという動きがあり、食と農とくらしが崩壊する「アリ地獄」に陥る危険性を指摘しました。
また、「日本の農業は過保護だ」とする論調に対しても、欧米諸国での農業所得に占める補助金の割合を比較して、日本の農家は極端に低いことを示しました。
難航の現状報告
アジア太平洋資料センター(PARC)の内田聖子共同代表は「日欧EPA――交渉の内容と市民社会」のテーマで講演。日欧EPAの交渉分野が多岐にわたることをあげ、特に、越境データ問題(電子商取引)、ISDS(投資家対国家紛争解決)、政府調達(鉄道)で難航している現状を述べました。
RCEP(東アジア地域包括的経済連携)交渉会合が2月から3月にかけて神戸で行われることを示し、「日本や韓国がアジアの途上国に対し、医薬品特許の保護強化、ISDSを提案していると伝えられている」と懸念を述べました。
日本でもNGOや労働組合、市民団体などが「市民会議」を立ち上げるとともに、市民の声を届ける「ステークホルダー会合」を設定するよう政府に働きかけていくことを呼びかけました。
各界からも発言
各界から2人が発言。東京靴工組合の佐藤直哉書記長は、靴も海外からの輸入が大きく占め、国内の靴産業の労働者にしわ寄せがきていること、日本人・日本の風土に合った靴づくりをしていく必要性を述べました。
酪農家で千葉県長生地域畜産振興協議会会長の中村種良さん(千葉県農民連)は、牛の頭数が減少し、乳価が低い現状を述べ、「牛乳で酪農家の採算がとれる乳価が必要」だと語りました。
(新聞「農民」2017.2.13付)
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