海水をとり入れた“潮(しお)トマト”で
若い担い手の育成に全力
大分県農民連会長
佐藤隆信さん(日出町在住)
リポート
農民連第22回定期大会(1月16日〜18日)で各地の新規就農支援の取り組みを紹介する発言が相次ぎ、大分県農民連の佐藤隆信会長の発言も多くの反響を呼びました。佐藤会長に取り組みをリポートしてもらいました。
農業だけで生活できれば
若者はもっと参加してくれる
トマト研究会を18人で立ち上げ
私の町(大分県日出=ひじ=町)は、市町村合併をしない町で、県下で唯一人口が増えている町でしたが、2015年ごろから減少し始めました。その中で農林漁業も担い手の減少が続いています。
私は、郵便局で働いていましたが、トマト専業農家の知人に勧められて1992年に退職してトマト作りを始め、日出町にトマト研究会を町内のトマト農家18人で立ち上げました。その後生産者が高齢化し、現在では4人になっています。
担い手減るのは今の農政に問題
農業の担い手がいなくなる原因は、国が農業を基幹産業としない政治と「農業では生活ができない」という今の農政にあるのではないでしょうか。農業で生活できれば若者は農業に参加してくると思い、2007年に隣の村の水田150アールを借りて国、県、町の事業を取り入れて80アールのハウス施設と選果場を建設しました。
20歳〜40歳の労働者2人と20歳の農大生1人を含む4人で真那井トマト農園生産組合を立ち上げ、海水を取り入れた高糖度トマトの生産を始めました。
台風で施設に海水入りヒント
海水(潮)トマトのヒントは台風でした。トマトの施設に海水が入り込み、そのトマトが甘くなったのがヒントで、いろいろ研究して現在の糖度8度以上のトマトができるようになりました。
別府湾に隣接した立地条件で、用水路から海水をくみ上げ、太陽熱消毒の際に海水を投入しています。
普通のトマトに対する潮トマトの栽培面積の比率を徐々に高めてきました。
選果には、地域住民を積極的に雇用し、地元行事への参加、農大生等の研修生の受け入れを実施するなど地域への貢献を大切にしています。
13年には、第45回大分県農業賞(生産・加工・販売グループ部門)の最優秀賞を受賞しました。
息子もUターン 青年も2人参加
今後は、後継者の育成にも力を入れたいと考えています。
10年に私の息子が県外からUターンで参加し、15年に36アールのハウスを拡大して、青年就農者が2人参加しました。
16年に組合長を若い担い手にゆずり、新たに自宅がある地域で、31歳の森山拓さん、43歳の片岡和彦さんと私と3人で50アールのハウス施設で潮トマト栽培を始めました。2人は農業は初めてです。
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トマトハウスで(左から)片岡さん、佐藤会長、森山さん |
販売先は全国に自信もちさらに
森山さんは農民連九州ブロック交流集会に参加しました。農民連第22回定期大会から帰って1月24日に片岡さんも農民連に加入しました。私の地域で農産物の直売所を作る計画を立てています。
高齢者も含めて村を活性化させるために生産活動にもっと力を入れ、若い担い手をつくり農民連を大きくしていきたいと話しあっています。
現在の販売先は、農協の産直、スーパー、ホテル、県内市場、隣地区の産直、個人など全国に販売されています。
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直売所に並ぶ潮トマト |
農民連定期大会レセプションで「甘い」と大好評
農民連定期大会の記念レセプション(1月16日)でも、潮トマトは大好評でした。
口にした人たちは口々に「甘い」「おいしい」と感想を述べていました。
食料を作る楽しさ感じてほしい
佐藤会長と一緒に
トマト栽培を始めた二人は…
片岡和彦さん
「地域農家が協力して現在疲弊している地域農業を活性化させるためのモデルケースを構築して広めていきたいです」
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森山拓さん
「自分が本当に食べたいと思える安全で高品質なおいしい農産物を生産して、自信を持って販売していきたいと思います」
佐藤会長のコメント
食料を作る楽しさを感じながら働き、生活のできる農業者を育てたい。地域の人たちとともに、新しい農村社会を作るために活動してもらいたいと思っています。
(新聞「農民」2017.2.13付)
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