抗議声明
TPP承認案・関連法案の
強行成立を糾弾し、新たな
たたかいを呼びかける
2016年12月9日
農民運動全国連合会
一、本日、安倍政権は、国会前と全国各地で抗議の声をあげる国民と野党4党の反対を押し切り、TPP承認案・関連法案を参議院本会議で強行可決・成立させた。国会決議と選挙公約を乱暴に踏みにじり、衆議院・参議院で強行可決を繰り返した安倍政権と自民・公明・維新・こころ各党を、われわれは満身の怒りと軽蔑を込めて糾弾する。裏切り者よ、恥を知れ! 歴史に残る背信行為をわれわれは絶対に許さない。
二、国民の利益をグローバル企業に売り渡すTPPの危険性は、国会審議でますます明白になった。TPPには国会決議が求めた「除外」規定が皆無であり、農産物重要5品目で「無傷なものは一つもない」ことを森山前農水相も山本農水相も認めざるをえなかった。さらに、「例外」を勝ち取ったと称する米や麦、乳製品、牛・豚肉、砂糖も、7年後に農産物輸出5カ国から関税撤廃に向けての再協議が義務付けられており、「底無し沼」である。食の安全、医薬品・薬価、ISDS(投資家対国家紛争解決条項)などなど、広範な国民の生活を直撃するTPPの亡国的危険性は、安倍政権の薄っぺらな釈明と異常な秘密主義にもかかわらず、いよいよ浮き彫りになった。
三、異様なのは、トランプ次期大統領が就任初日にTPPから脱退することを表明したさなかに、安倍政権がTPPを強行可決したことである。安倍首相は、日本が承認しなければ「TPPは完全に死んでしまう」と声を張り上げているが、TPPは、その規定によって産声をあげる前に死につつあるのである。政治学者の白井聡氏は、就任前のトランプ詣でを「飼い主を見誤った犬が、一生懸命に尻尾を振って駆けつけた」ようなものと喝破したが、「日本がTPPの国内手続きを断固として進め、米国を説得する」という首相の言明は、妄想か、口先だけの強がりにすぎない。
また万万が一、トランプ氏が「変心」し、公約を裏切ってTPP推進に転ずるとすれば、それは再交渉を通じてTPPをはるかに上回る大幅な対米譲歩を迫るものにならざるをえない。
TPPをモデルにしたRCEP(東アジア地域包括的経済連携)やFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏) 、日・EU(欧州連合)FTA(自由貿易協定)などの大型FTA促進を狙い、「自由貿易の旗手」を気取る安倍政権の暴走は、財界・多国籍企業奉仕の政治そのものであり、グローバル化の進展に待ったをかける世界の流れに逆行する反歴史的な愚行である。
四、「アメリカ第一主義」「日本の負担増」を要求するトランプ次期大統領は、日米FTAを要求することを公言している。トランプ流「2国間FTA戦略」は、日本を最大のターゲットとし、TPPを出発点に、従来の日米構造協議やTPP交渉参加前後の二国間協議などを通じた対日要求の総決算を求める“日米版TPP”の様相を呈するものになることは必至である。安倍首相は、日米FTA交渉を明確に否定するよう求めた与党議員の質問に対し、拒否を明言するのを避けたうえでTPP可決を強行したが、これはアメリカの思う壺(つぼ)にはまる危険で無責任な暴走である。
五、たたかいは新たな段階に入った。われわれは、この6年間のたたかいで築き上げてきた幅広い共同の輪をさらに広げ、TPPからの離脱を要求し、日米FTAを断固として拒否するたたかいに全力をあげる。
「TPP抜きのTPP対策」「日米版TPP対策」というべきアベノミクス農政のもとで、農協・価格保障制度・農地制度解体攻撃はますます凶暴の度を加えることは必至であるが、農民と国民の要求はいよいよ切実になり、矛盾が噴き出して、暴政が行き詰まることは不可避である。農民連は、国民・農民と農業・農協関係者の不安と不満を背に抱え、無数の要求を掲げてたたかう。
日本農業と国民生活、主権を守ることを希求する国民の願いと安倍政権が両立しえないことは明白である。
農民連は、平和と立憲政治の回復、脱原発、個人の尊厳を求める運動に合流し、安倍政権打倒、TPPからの離脱・日米FTA拒否を求めるネットワークを広げ、国民と野党の共同を発展させて、衆院選挙で自公とその補完勢力を少数派に追い込むために全力をあげる。
(新聞「農民」2016.12.19付)
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