「農民」記事データベース20161128-1240-01

忍者の里に新しい支部

今の農政では
農業と地域は守れない
三重

危機感から伊賀・名張支部結成

関連/農民連第22回定期大会のご案内


みんなで協力し合って
地域から運動起こそう

 忍者の里として有名な三重県西部の伊賀盆地。伊賀米の産地としても知られ、水田が広がっています。この地で三重農民連の新しい支部が発足しました。伊賀市と名張市を中心に10人が賛同。11月15日に結成総会が行われました。

 発起人となったのは、伊賀市の奥澤重久さん(68)です。元国鉄マンで、運転士一筋に務める一方、労働組合活動でも奮闘してきました。

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結成総会であいさつする奥澤さん(立っている人)

 退職後は実家の農業を継承し、現在は6ヘクタールを耕作。昨年に集落営農法人を立ち上げています。

 三重県連の川辺仁造会長との縁もあり、昨年、峯岡繁県連事務局長の誘いで農民連に加入。今年の東海ブロックの交流会に参加し、今の農政では農業を守れないことから地域から運動を積み上げていく必要性を感じ、支部の結成を進めました。

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鈴鹿の山々が見渡せる奥澤さんの田んぼで、お気に入りの青い軽トラと奥澤さん

 農家の減少は地域の衰退に

 結成総会には賛同者5人のほか、峯岡さんと奈良県農民連の森本吉秀会長(農民連常任委員)が参加しました。

 結成に賛同した伊賀市の米農家、谷口雄さん(69)は元農協職員です。大豆と小麦を含め40ヘクタールを耕作する集落営農を64戸で組織。代表委員を務めており「昨年度の決算が初めて赤字になった。農地は集まってくるが、オペレーターも限界に近い」「最近の農協は昔と違う。以前は農家の立場に立って運動をしていたが、最近はTPPを何でもないことのように話していてショックを受けた」「政府の介入で農協が解体されるのでは」という危機感から参加を決意しました。

 名張市の伊藤伝一さん(86)は無農薬で米を6ヘクタール栽培しています。都合が悪く出席できなかった名張市の3人から、託されて参加しました。「地域では、採算の取れる農業をどう作るか、みんな悩んでいる。そのための体制を作っても人材を育てないと続かない。そのためにもみんなで協力する必要がある」と話します。

 峯岡さんは情勢報告で「農家の減少が続いているが、農業は地域経済を支える生業で、農業の衰退は地域の衰退に直結する。伊賀米やナシ、ブドウなど果樹の特産もあるので、販路を確保し生産を盛んにしていこう」と述べました。

 準産直米にも取り組めれば

 また、記念講演で森本さんが奈良県連の活動を紹介しました。それを受けて参加者から様々な意見が出されました。奈良県のセンターのような場所がほしいという意見に対しては森本さんが、「まずは、小さくてもいいから、集まって共同で作業ができる場所を作るといい」とアドバイス。

 「今のままの米価ではずっと赤字で経営が続けられない」という悩みや「無責任な農政では農村がバラバラになってしまう」という危機感も出て、「今度の総選挙で農業政策を焦点の一つにしなければ」「所得補償制度も国だけでなく、市長にも申し入れをしよう」という意見が出され、今後の活動も見すえた議論が行われました。

 また、米は今まで農協出荷という参加者が多く、峯岡さんから準産直米の取り組みも紹介され、質問を交えながら興味深そうに聞き入っていました。

 総会では、盆地の大部分を占める伊賀市、名張市にちなみ、支部名を「伊賀・名張支部」と決めました。会長には奥澤さん、事務局長には伊賀市の森田由一さん(41)が選ばれました。

 峯岡さんは「名張市はしばらく組織のない空白になっていた。今回、こうして組織ができたことは県連にとっても大きな励みになる。全国大会に向けて他の地域でも支部結成に全力を尽くしたい」と意欲を燃やしていました。


農民連の精神を農協のなかにも

 伊賀・名張支部会長の奥澤重久さん 就農直後は1ヘクタールだったのが現在は6ヘクタールになり、昨年、営農組合を10人で立ち上げました。米のほかに、ひの菜や伊賀菜を作って漬物への加工もしています。

 一人一人を大切にする社会を作るためには、まず命のもととなる食べものと、それを作る農業を大切にする必要があると思っています。

 全国のみなさんと情報を交換して、正しい情報を地域に伝えていきたい。農民のための農協に戻すために、農民の意見が反映されるようにしたい。組織を作って市にも働きかけを進めていきたいと思っています。

米作りと里山の再生をめざして

画像  伊賀・名張支部事務局長の樹木医、森田由一さん 地元は「産廃銀座」と呼ばれる状況で、「このままでは村がダメになる。自分のできることはないか」という思いで、米作りと里山の再生を行おうと決意しました。

 2004年に樹木医の資格を取るとともに、60〜80アールほど、無農薬で生物多様性を育めるような米作りを始めました。山がきれいになれば子どもたちが自然に遊びに来ます。子どもたちが住んで楽しいと思えば、おとなになっても住んでくれる。それが地域を守ることにつながっていくと思います。

 奥澤さんとは一昨年ころから住民自治に関する運動で一緒になり、今回も奥澤さんの人柄にひかれていっしょに参加することにしました。支部のみなさんの思いをくみ取り、そこに自分の思いも載せて実現できるように、事務局長としてがんばっていきます。


農民連第22回定期大会のご案内
日程 2017年1月16日(月)午後1時半〜18日(水)正午
会場 東京・「大田区産業プラザ」
   (東京都大田区南蒲田1丁目20番20号)
   (京浜急行線「京急蒲田駅」徒歩2分、JR京浜東北線
   「蒲田駅」徒歩12分)
   ※16日午後6時から「記念レセプション」を大会会場で開催します。

(新聞「農民」2016.11.28付)
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2016年11月

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