東電の賠償打ち切り許さない
損害続く限り継続すべき
関連/飼料変更で乳牛死亡相次ぐ
東電本社と政府に
福島県農民連が要請
福島県農民連は11月4日、福島第一原発事故の賠償について、「2017年1月以降の農林業の営業損害を2年分一括払いし、18年以降の一律賠償はしない(事実上の賠償打ち切り)」とした賠償素案を撤回するよう、東京電力本社と政府に要請しました。
「2年分を一括払いし、その後は一律賠償はしない」という賠償方式は、すでに商工業の営業損害で昨年から実施されていますが、「相当因果関係を認めず、支払わない」「1年分なら払う」など、東電の一方的な判断で賠償が打ち切られる事例が相次いでいます。
福島県農民連は、「いまだ9万人近くが避難生活を送り、被害はより深刻化しているとすらいえるのが現状だ。損害が続くかぎり、これまで通りの方法で賠償の支払いを継続すべきだ」と求めました。しかし東電は、「あくまで“素案”ですので」「18年以降も(一律賠償はしないが)個別の事情をお聞きしてご相談に応じます」などと、のらりくらりと回答。
すかさず参加者から「今ですら個別事情を示しても東電は因果関係を認めず、一方的に支払わない事例が相次いでいるではないか」「(東電が賠償を値切ったりせず)2年分の賠償が出たとしても、具体的に何に使えば被害がなくなると考えているのか」と詰め寄られると、東電は「特段考えているわけではありません」と、他人事のような無責任な姿勢に終始しました。
福島県農民連は県内のすべての農協も「“素案”は認めない」としていることを伝え、重ねて「“素案”は撤回し、損害が続くかぎり賠償するのが当然だ」「経産省も撤回を指導すべきだ」と、強く要求しました。
購入飼料代はすぐ賠償を
福島県農民連はまた、原発事故後、乳牛の死亡が相次いでいる事例についても賠償を要求しました。福島県内では、原発事故で牧草が放射能汚染され、輸入飼料への変更を余儀なくされたことや、除染のため牧草地にカリウムが散布され、その牧草が給与されたことによって、多くの酪農家で牛に死亡や病気による廃牛が発生しています。
この日は酪農家2人も参加し、牛の死亡数、牛乳代金の減少、代替飼料の購入費用などを具体的に示し、すみやかに請求に応じるよう求めました。
しかし東電は、「現在、専門家に内容を確認中」と言うばかりで、参加者から「この問題はもう4月から要求している。いつまで調査しているのか」「いったいどこの専門家に確認しているのか」と追及されても、「それは言えない」との回答を繰り返しました。
さらに福島県農民連は、牧草地の除染が終わり牛への給与制限が解除された後でも、放射能汚染やカリウム過剰の牧草を与えることへの心配から、多くの酪農家が輸入飼料を購入・給与せざるをえない現状におかれていることも訴え、「本来原発事故がなければ必要なかった経費であり、除染後であっても購入飼料代は一刻も早く賠償すべきだ」と、要求しました。
要請には日本共産党の岩渕友衆院議員、紙智子参院議員が同席しました。
(新聞「農民」2016.11.21付)
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