TPPの衆院本会議強行可決に
満身の怒りをこめて抗議し、参院での
廃案めざし、さらなる運動を呼びかける
2016年11月10日
農民運動全国連合会会長 白石 淳一
一、11月10日、TPP承認案および関連法案が衆議院本会議で自民党、公明党、日本維新の会の賛成多数で強行可決され、参議院に送られた。
本会議は、野党4党の反対を押し切って佐藤勉衆院議院運営委員長の職権で強行開催された。「強行採決するかどうかは、佐藤委員長が決める」などと述べた山本有二農水大臣の暴言通りに本会議を強行したことは絶対に許されない。
農民連は、安倍内閣とTPP承認案・関連法案を強行可決した自民党、公明党、日本維新の会の3党の暴挙に満身の怒りを込めて断固抗議する。
一、11月4日のTPP特別委員会での可決は、地球温暖化対策の新たな枠組みである「パリ協定」採択のための本会議開会に向けた努力が行われていた最中に、委員長職権で委員会を開催し、民進党、共産党が強く抗議する中で強行された。国会のルールを無視した前代未聞の暴挙である。
一、TPPの審議は、まったく尽くされていない。与党は野党が強く要求した交渉の全経過を知る甘利前担当大臣の国会招致を拒否し、約8400ページの協定文の和訳は2400ページにすぎない。SBS(売買同時入札)米の価格偽装問題など、審議の前提にかかわる問題を棚上げし、与野党で合意したテーマ別討論も地方公聴会も極めて不十分であり、中央公聴会に至っては開催もされなかった。
不十分な審議の中でも、国会決議違反の実態が明らかになった。農産物重要5品目の3割もの品目の関税撤廃、守られたとするものも7年後に5カ国から関税撤廃に向けての再協議が義務付けられ、「無傷なものは何もない」ことを森山前農水相も山本農水相も認めた。食の安全、医薬品・薬価、ISDS(投資家対国家紛争解決)など審議すればするほど、疑問は深まり、危険性があらわになった。
一、9日、米大統領選挙で、「TPPからの即時脱退」を公約したトランプ新大統領が勝利した。さらに11日には、オバマ大統領が任期中のTPP批准を断念し、「TPPは事実上死んだ」(ウォールストリート・ジャーナル)という状態に陥っている。それにもかかわらず、衆議院通過を強行したことは愚かきわまる行為であり、世界への恥さらしである。愚行の政治責任は、あげて安倍政権と自民・公明・維新にある。
一、たたかいの舞台は、参議院に移った。安倍政権は、衆院通過後30日での条約の自然成立も視野に会期延長をたくらんでいるが、関連法案に自然成立はない。協定承認案と関連法案の両方の可決なしに国内手続きは完結しない。徹底した審議を求めると同時に、4野党とも連携し、TPPの危険性を広く国民に暴露し、反対の世論で国会を包囲する。
TPPに反対する世論は、日に日に高まっている。農民連は、この6年間のたたかいで築き上げてきた共同の輪をさらに広げ、廃案めざしてたたかい抜く決意である。
*事態の変化に応じて一部修正しました。
(新聞「農民」2016.11.21付)
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