「農民」記事データベース20161121-1239-01

“TPPは事実上死んだ”米紙が報道

それでも強行
安倍政権の暴走ストップを

オバマ大統領が議会承認を断念


 オバマ米政権は、来年1月の任期終了までにTPPの議会承認を強行することを断念し、トランプ次期大統領と上下両院ともに共和党が多数を占めた次期議会にゆだねることを決めました。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルとロイターが11月11日に報じたもの。日本のメディアもいっせいに「協定発効は絶望的」「発効の道筋は閉ざされた」と報道しました。

 9日、新大統領に当選したトランプ氏は「大統領就任の初日にTPPから離脱する」ことを公約に掲げ、10月22日に公表した「国民との約束 100日行動計画」でも「TPP離脱」を明記しています。

 安倍政権は、トランプ氏が公約を裏切ってTPP推進に転換することに、かすかな望みをつないでいます。しかし、これは自分が「TPP断固反対 ウソつかない ぶれない自民党」という公約を裏切って、「TPP断固推進」を押し通す厚顔・暴走ぶりをトランプ氏に押しつけるもの。

 しかし、白人の中低所得者層を中心にしたトランプ支持層の66%はTPP反対、賛成はわずか17%です(図)。選挙後、トランプ氏の政権移行チームが明らかにした政策案では、「貿易改革」の項目で、TPPには直接言及していないものの、「米国第一ではない貿易協定で米国の職が失われた」とし、「トランプ政権は数十年来の貿易政策を転換する」と強調しています。これにTPPが含まれるのは、自明のこと。自民党の“コウヤク(膏薬)”のように、簡単にはがせる公約ではありません。

 それにもかかわらず、オバマ大統領は任期中の議会承認を諦めてトランプ政権にゲタをあずけざるをえませんでした。加えてTPPは、GDP(国内総生産)が60%を占めるアメリカが批准しなければ発効せず、つぶれる宿命を背負っています。

 トランプ氏が変質しないかぎりTPPはつぶれる――ウォールストリート・ジャーナルが「TPPは事実上死んだ」と報道したのは、大げさでもなんでもありません。

 審議の強行をただちにやめよ

 トランプ氏勝利の翌日、11月10日にTPPの衆議院通過を強行したときの安倍政権の言い訳は「オバマ大統領は本年中の議会通過に全力で取り組んでいる」(菅官房長官)からというもの。オバマ政権が年内通過を断念したいま、こんな言い訳は吹っ飛びました。

 また、安倍首相は11日の参院本会議で「あらゆる機会をとらえ、米国などに国内手続きの早期完了を働きかける」と答弁しましたが、これも虚しい独りよがりにすぎません。

 さらに、オバマ政権の断念が伝えられると、「日本が承認しておかなければ、米国の離脱や再交渉を容認するという誤ったメッセージになる」(首相官邸筋)などと言い出す始末です(読売新聞)。

 すでにメキシコやペルー、オーストラリア、マレーシアなどは、アメリカの離脱を想定した検討を始めています――それが現実的であるかどうかは別として。

 オバマ大統領はある意味で潔いといってよいかもしれません。

 しかし、安倍政権は「ああ言えば、こう言う」式の屁(へ)理屈を重ねてTPPにしがみつき、世界の動きを全く見ずに暴走を重ねています。審議強行をただちにやめさせること、暴走政権を倒すことが、いま求められています。

(新聞「農民」2016.11.21付)
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2016年11月

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