関東・東北豪雨被害から1年
復旧いまだメドたたず
自治研集会での河田健児さんの報告
(茨城県常総市、稲作農家)
生活の再建、農機具の修繕など
国や自治体の補助乏しく困難
10月1日に開かれた第13回地方自治全国研究集会(茨城県つくば市)の全体会・基調フォーラムで、常総市の稲作農家、河田健児さん(茨城県西農民センター会員)が行った報告の要旨を紹介します。
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昨年9月10日の関東・東北豪雨で大きな被害を受けたなか、全国から物心両面にわたる温かいご支援をいただき、御礼申しあげます。
水害前は家族4人で一緒に暮らしていましたが、私たち夫婦は常総市、息子夫婦は牛久市と、住まいがバラバラになってしまいました。住まいは取り壊されたまま1年以上が経過しましたが、いまだに再建のめどはたっていません。
私の自宅は、決壊した堤防から南東に約6キロの位置にあります。鬼怒川と小貝川に挟まれ、地盤が低いため今までにも度々水害に見舞われてきました。今回は、避難が遅れてしまい、一晩中2階の部屋で過ごし、翌朝自衛隊のヘリで救出されました。その後親戚の家で避難生活を送り、自宅に戻れたのは4カ月後の今年1月中旬でした。
昨年、自宅の片付けが一段落した後、明治学園東村山高校の生徒さんたちが田んぼのゴミ拾いに来てくれました。ぬかるみもあり足元が悪いところを良くやってくれたと感謝しております。
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家財道具やがれきなどあらゆるものが土砂とともに田んぼに流れ込みました(常総市) |
わが家は床上110センチの大規模半壊と認定され、解体せざるをえなかったため、被災者生活再建支援金として、合計300万円が支給されました。しかし、生活を立て直すには程遠い金額で、私の他にも自宅を再建できず他の自治体に移り住んでいる家庭がまだ何軒かあります。
建物以外にも、庭に置いてあった軽トラック、ワンボックスカー、農機具などが水没し、多額の修繕費がかかりました。農機具については国、県、市から60%の補助があったので助かりましたが、軽トラックは農作業には欠かすことができない車両であるにも関わらず農機具とは別扱いになり、補償の対象外になっています。
私は被害を受けたとき、年齢やこれから先のことも考え、農業をやめようと思いました。1俵1万2000円で採算が取れないでいるのに、自宅や生活の再建を優先すると、農機具の修繕や資材費に回す資金は厳しく、後ろ向きの考えばかり浮かんできました。
今年1月に被災農家向け支援事業の案内文書が届きました。これは家に保管していて水没した米を支援するという内容でした。私は農協に出荷した以外の自家用米3俵を申請して助成金をいただきました。
米作り続けます
今回の水害で農機具や保管米の補償など不十分ながらもされていますが、被災した住民が要求を国や自治体に届けることの大切さをあらためて実感しています。
そんな中で私は一度あきらめかけた、米を作り続けることにしました。その理由は、一つ目は収穫し、自宅保管米や農機具への補助が出ることでこれからの負担が少しは軽減されること、二つ目は先祖から受け継いだ土地を荒らすわけにいかないという考えからです。
農業だけで暮らしていくことが難しくなっているなかで、年齢を考えると生活再建は大きな壁に阻まれています。暮らしを再建するためには、国や地方自治体がもっと被災者の立場に立った対応をすることが必要だと考えます。
(新聞「農民」2016.11.7付)
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