「農民」記事データベース20161024-1235-11

地域の話題
あれこれ

島根県 長谷川敏郎


JR三江(さんこう)線廃止
地域の活性化に欠かせぬ“財産”
「むらの足」をどうつくるか?

 一気に進むのか不安が広がる

 JR三江線は広島県三次市から島根県江津市を結ぶ108キロメートルの路線。JR西日本は9月末、国交省に廃止届を提出し2018年4月1日に廃止します。100キロメートル超の鉄道全線廃止は本州で初めて。今後両県と沿線6市町は、バス転換に向け地域公共交通活性化再生法により、公共交通の再編とまちづくりを一体的に進める計画です。

 三江線廃止を皮切りに中国山地の木次線、芸備線、因美線などの廃止が一気に進むのではと不安が広がります。4月、大平喜信衆院議員(日本共産党)は廃止で地域がさびれるという住民の不安を取り上げ、「単に移動手段というだけでなくて、その町の文化であり、観光資源であり、地域の活性化に欠かせない一つの財産」として存続を求めました。

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江の川と急しゅんな山の間をぬうように走る三江線

 バス停では代行無理な生活機能

 「JR発足当時から三江線は赤字であり、そのことを承知の上でJRに引き継いだ、それでも経営はやっていける」との判断だったはず。JR西日本はこの3年間で1000億円を超える営業利益をあげ、国鉄分割・民営化以降最高額。代替輸送道路の整備も未解決と指摘しました。交通権学会の上岡直見会長(注1)は「交通は人権である」。「バス転換は地域消滅への道」、利用者が減ればバス運行も維持できないと指摘します。

 半世紀以上かけ形成された駅を中心とした生活圏の機能はバス停留所では代替できません。三江線には33の駅があります。邑南町の旧瑞穂地区では「道の駅瑞穂」と「産直市みずほ」「田所駅」が同居し、町営バスや民間バス(大田・広島間「石見銀山号」)の駅となり、地域の拠点としてにぎわっています。

 「基本的人権」にかかわる問題

 同時に三江線廃止は、沿線の広大な中山間地域の住民の交通権の保障を置き去りにしたまま。通院や通学だけでなく、憲法の定める基本的人権の実現に移動の自由は欠かせません。

 島根県の軽自動車保有は1世帯に1台以上(全国5位)。全国の農家に限ると主な運転手は70歳以上が4割です(注2)。「むらの足」をどうつくるかは、これからの課題です。

 (注1)上岡直見著『鉄道は誰のものか』
 (注2)2014年日本自動車工業会調査

(新聞「農民」2016.10.24付)
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2016年10月

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