「農民」記事データベース20161017-1234-01

徹底調査と全容解明を

SBS輸入米の価格偽装

農民連・食健連農水省交渉

関連/農水省 調査結果を公表するも「影響なし」の結論ありき


MA米の輸入はやめよ
TPP承認案の撤回を

 農民連と全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)は10月5日、SBS(売買同時入札)輸入米の価格偽装問題について農水省に要請しました。日本共産党の畠山和也衆院議員も同席しました。

 農家と消費者は憤りでいっぱい

 冒頭、農民連の白石淳一会長が「低米価が続くなか、調整金の発覚で国産米の価格には影響を与えないとしてきた政府の説明がまったくのでたらめであったことが明らかになった。農家は憤りでいっぱいだ。『民間の取引の問題、法的には問題ない』との逃げの姿勢でなく、真剣に調査し全容の解明を」と強く要請しました。

 要請項目は、(1)真相究明のための徹底調査と解明、(2)SBS買入・売渡価格、マークアップ(売買差益)などの公表、(3)SBS・ミニマムアクセス(МA)米入札の停止、(4)「対策」根拠のくずれたTPP承認案の撤回――などです。

 農水省の担当者は「生産者の不信感を払しょくするため全力で調査している」「契約ごとの価格などを公表することは民間同士の契約であり、企業の利益を害する恐れがあるのでできない」「調査結果が出るまでSBS入札は停止する」「輸入が増えても同量の国産米を市場隔離するので、需給への影響は遮断される。TPP承認案の撤回は考えていない」などと回答しました。

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SBS米の価格偽装を追及する参加者。白石会長(立っている人)と畠山議員(その左)

 他人事は無責任政府も当事者

 これに対し参加者は、「SBSは国と買受・売渡業者の3者契約になっていて国は当事者であり、『民間の契約だから公表できない』『念のために調査する』などという他人事の姿勢は無責任だ。国産米に影響はなかったかのような調査結果を出すことは絶対に認められない」と強く批判。

 また、国内の業務用米とSBS米の価格が同じだと説明してきたのに、実際は「調整金」により安く流通していたことを指摘し、「市場価格に影響を与えないという政府説明の前提は崩れた」と論破しました。

 裏金ひねり出す国家的な犯罪だ

 次に、6月の東京地裁判決で認定された「調整金」は8契約、1297トンで総額4941万円になることを示し、「本来なら、マークアップで徴収できた金額であり、国家的な犯罪だ」と告発。「もともと業者も使いたくない外米を買ってもらうための裏金をひねり出すために“高すぎる”買入予定価格を設定してきたと思わざるをえない」と追及しました。

 疑惑まみれのSBS・MA米は中止を

 さらに、輸入米をめぐって、2008年の事故米(輸入汚染米)事件や数々の表示偽装事件、アメリカとの密約など疑惑まみれであることを指摘し、「汚染米事件も需要のないМA米が原因だった。SBS米の『調整金』問題も、いらない外米を無理やり売るために生まれてきたものだ」と批判しました。

 農水省の担当者は参加者の発言に対して「ご趣旨はよくわかります」「その通り」などと答えざるをえませんでした。

 最後に、参加者は、生産者米価に計り知れない影響を与えてきたSBS・МA米を中止することと、TPP承認案を撤回することを強く要求。引き続き、徹底して追及し、真相を生産者、消費者にも明らかにしていくと訴えました。


農水省 調査結果を公表するも
「影響なし」の結論ありき

疑惑を隠ぺい
調査の名に値しない

 SBS価格の偽装が発覚して調査を実施していた農水省は、10月7日「輸入米に関する調査結果」を公表しました。

 私たちが強く求めていた「真剣な調査と真相の究明」には程遠い、作為と隠ぺいに満ちたデタラメな調査結果です。

 「調査」とは名ばかりで、輸入業者26、買受業者113に対する電話等での聞き取りであり、無回答も認められているうえに虚偽の回答をしても罰則もなし。期間も5年間のみです。

 さらに、肝心の国内米価格への影響の分析については、SBSの入札状況と国産米価格の一般的なデータを並べあげるだけで、「調整金」による値引き販売の影響には一切目をつぶっています。

 最初から「影響はなかった」との結論を導き出すための無責任、不誠実きわまりない調査にすぎません。

 「買受業者・輸入業者へのヒアリング結果」では、輸入商社26社中、調整金のやりとりが「過去にあった」「現在もある」が19社、「これまでない」が7社。実に7割以上の商社が手を染めていたことがわかります。

 一方、113の買受業者のうち「これまでない」が61で5割以上に上ります。これは、買受業者のうち「名義貸し」業者が多く存在していることを表しています。実際の実需者段階の調査を行った形跡はありません。

 「調整金」の活用方法や背景・目的などは一応ヒアリングしていますが、金額や授受の方法などは一切触れていません。

 「国産米の価格とSBS入札との関係」では、「SBS入札の時期の前後において、国内産米の価格はほとんど変動していない」としています。

 調整金の存在が明らかになったことから「生産者の不信感を払しょくするため」に調査を行ったにもかかわらず、肝心の調整金の詳細を把握することなく、既存のデータを羅列して、SBS入札時期前後の「コメ価格センター価格」と「相対価格」を並べて「変動なし」とする不誠実さ、非常識さには怒りを通り越し、あきれるしかありません。

 農民連は、さらに調査結果を分析し、反撃の準備をしています。

 引き続き、徹底究明を要求し、МA米・SBS米の疑惑解明なしの拙速なTPP批准は許さない運動を発展させましょう。

(新聞「農民」2016.10.17付)
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2016年10月

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