「農民」記事データベース20160926-1231-15

旬の味


 「山は青く水は清き」。なんと清廉な響きだろうか。永眠された小林節夫さんのエッセー集である。農民連の生みの親であり、怒りの炎をかざして長年にわたり農民運動の先頭に立って奮闘してきた小林さん▼農について、こんなにも柔らかいまなざしで視ていたのかと改めてその奥深さに敬服する。文中の「農業は土を耕すと共に人間の心を耕す」に真摯な姿が重なる。「ものを作ってこそ農民」、「もの言う農民」を一貫して語り、自ら実践してきた▼印象的なのは、出張のとき、いつも自分で作った米と炊飯器を携帯し、ご飯がうまいからと、郷里、長野の檜づくりの曲物の弁当箱を愛用していた。このこだわりに多くの人が学んだ。米への特別な思い、食と健康に対する執念が伝わってくる▼卒寿を記念した講演記録「耕し、学び、考える」には、農の道ひとすじに生きた鮮やかな人間像が浮かんでいた。農民運動の生き証人であった大先輩を失ったことは寂しい限りである。故人の遺志を受け継ぎ、闘い続けていきたい。

(長)

(新聞「農民」2016.9.26付)
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2016年9月

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