「農民」記事データベース20160926-1231-01

長雨に続く台風連続被害

農業生産の根幹を揺るがす

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北海道
農民連・白石 淳一会長
甚大被害の十勝地方を調査・激励

 6月からの長雨と、1週間に3つの台風が立て続けに上陸し、さらに台風10号で甚大な被害に直面している北海道。農業被害面積が1万2000ヘクタールを超えています。

 農民連は白石淳一会長を先頭に、9月9、10の両日、大きな被害を受けている十勝地方に被害調査・激励に入りました。

 北海道農民連の山川秀正委員長は今回の長雨、台風による被害について、「直接の水害や土砂災害よりも、6月から続く長雨と、畑に水がたまることによる湿害の打撃が大きい」といいます。収穫が終わった秋まき小麦は長雨による未熟、発芽などが多く、乾燥調製後の品質検査でも2等が主体で製品歩留まりも5割程度、残りはくず小麦という状態です。

水が引かず収穫できない
サヤのなかで発芽も

 他の作物も、「雨続きで畑に機械が入れられず、作業が遅れていて、収穫してみなければ被害状況はわからない」といいます。大正金時や小豆などは、さやの中で発芽が始まっています。

 「十勝地方の農家は30〜40ヘクタール耕作し、売り上げは約3000〜4000万円が平均だ。これから認定される農業共済金を見込んでも売り上げが7〜8割に落ち込むのではと心配している。これでは農家の生活費が確保できない」と山川さんが話すように非常事態です。

 また、台風による水害でも大きな被害が出ています。近隣の芽室町では缶詰工場が浸水で操業を停止。「契約栽培のスイートコーンが出荷できなくなり、契約栽培のため他に転売もできず、農家はどの程度代金が支払われるのか不安を募らせている」と山川さん。

 収穫作業の遅れは、来年度の作付けへの影響が心配されています。十勝地方は畑作物の輪作が行われ、ジャガイモなどの収穫後に秋まき小麦の種まきを行います。収穫が進まないため、小麦の種まきの計画がたてられなくなっています。

 さらに主要道路や鉄道が寸断。道内だけでなく北海道と本州間の輸送にも支障が出ています。

 10日は、本別農民組合員で町議の阿保(あぼ)静夫さんの案内で、町内の被災地域を視察しました。利別川支流の流域では、大雨により国有林から土砂や倒木が畑や道路に流れ出しました。

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中央奥の沢から流出した土砂、流木が畑に広がっています(本別町)

 「このあたりの山は地盤が弱く、台風8号で国有林から沢沿いに土砂が流出し、台風10号でさらに拡大した。町内で2、3カ所、同じように畑に土砂が流入している。流木などの撤去に費用が掛かり、土地代よりも撤去費用が高くなってしまう恐れがある」と阿保さん。「この畑は25歳の若い農家が耕作しているが、気持ちが折れてしまわないか心配だ」

このままでは来年の見通し立たず

 直接の被害だけではありません。山裾にあるシカの防護柵も破損し、早急な対策が必要です。町全体では5キロほどの防護柵が土砂災害で破損。被害を受けていない農地もシカ、熊などの食害にさらされてしまいます。

 まるで池のように水がたまった畑もあります。作付けされたビートや小豆は変色を始めていました。「今までこんなに水がたまったことがない場所でみんな驚いている」と話します。

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水没した小豆畑(本別町)

 阿保さんの畑では収穫時期の大正金時が水につかってしまいました。「着色不良を起こしていてこのままでは出荷できない。さやの中で発芽を始めているものも出ていて、今年は全滅だろう」といいます。ビート畑では、長雨のため防除に入れず、葉腐れ病になり葉が真っ黒になったビートが広がっていました。

 音更町の田守文夫さん(51)のジャガイモ畑は前日の雨で水がたまっていました。「30年農業やっていて初めて」という状態です。「9・5ヘクタールのうち1ヘクタールが水につかった。これで今年水につかったのは3回目。腐っているから収穫は無理だろう」と嘆きます。

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田守さん(左)の水がたまったジャガイモ畑を視察する白石会長

 「麦も収量が昨年の半分。ビートも防除ができずに病気が出ている。長芋も、掘ってみないとわからないが、どうなっているか」と話し、「何かダメでも他で取り返せるのが十勝の農業だった。今年みたいに、みんなダメということは今までなかった」と今年の異常さに驚いています。

 他の地方の被害も合わせ、日本の食糧基地・北海道の、農業生産の根幹を揺るがしかねない被害に対し、早期の復旧と営農の継続を担保できる支援が強く求められます。


北海道・岩手の台風・長雨被害
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(新聞「農民」2016.9.26付)
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2016年9月

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