農地の上で太陽光発電して
日本の農家を豊かにしよう
ソーラーシェアリング・サミット
in 長野・上田市
耕作農地の上に太陽光パネルを設置し、発電する「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」を、農村と農家経営の再生につなげようという「ソーラーシェアリングサミット2016イン上田 農とエネルギーの共存共栄」が9月3日、長野県上田市で開かれました。
植物にはある一定程度以上の照度があれば、光合成には影響が出ないという「光飽和点」があります。このしくみを利用して、耕作農地の上に藤棚のように高い架台を設け、十分な間隔を空けて太陽光パネルを置き、耕作と発電の両方とも行おうというのが、ソーラーシェアリングです。
上田市で今年からソーラーシェアリングを実践している合原(ごうはら)亮一さんの水田では、約30アールの水田の半分ほどの面積に、高さ3メートルの架台を設け、幅約40センチ、長さ約1・3メートルの太陽光パネルを672枚設置。支柱はトラクターなど農業機械が入りやすいよう十分に間をとって立て、パネルも作物にまんべんなく日光が当たるよう、水田の3分の1に影ができる程度に間隔を空けて設置しています。
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ソーラーシェアリングの水田の前で説明する耕作者の合原さん |
インターネットなどの技術者でもある合原さんは、照度センサーやカメラを設置してインターネットを介してコンピューターサーバーにデータを送り、外部からパネルの角度を自動制御するシステムも開発しました。これによって、太陽や雲の動きに応じて自動でパネルが動き、発電効率も上がり、稲の発育にも良い効果があると言います。台風などの強風時にはパネルを水平にすることで、風被害を防ぐこともできます。
設置費用は、架台やパネル、自動制御システムも含めて1700万円ほど(発電能力は最大約50キロワット)。電気は固定価格買取制度を利用し、全て売電しています。「買取価格は下がってきているが、今の価格でも十分費用回収できるし、収入にもなる。今のところ稲の発育もきわめて順調です」と合原さん。
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すべての稲株に日光が当たるよう、太陽光パネルの向きを自動で調節する |
耕作の継続が大前提生育にも悪影響なし
シンポジウムでは、千葉県匝瑳市でソーラーシェアリングに先駆的に取り組んでいる「市民エネルギーちば合同会社」の東光弘さんや、ソーラーシェアリング考案者の長嶋彬さんらが、事例を紹介しながらディスカッションを繰り広げました。
東さんは、匝瑳市の農家の高齢化や地域の衰退に直面するなかで、なんとか若い農業後継者を育て、農家が元気になることで地域を再生したいと、ソーラーシェアリングに取り組んできた経緯を語り、「巨大資本ではなく、地域や関わる人々に収益が分配されることがソーラーシェアリングの魅力。まずはやってみよう」と、呼びかけました。
参加者から多かった「本当に下の作物には悪影響はないのか」との質問には、「今まで野菜やイモ、果樹などさまざまな作物で実践しているが、どれも影響はない。むしろブルーベリーなど出来が良いものもある。また炎天下の作業もしやすく、蒸散しすぎるのを防ぐ効果も高い」と、東さんは答えていました。
また農地法との関連で、「支柱の面積は農地転用が必要だが、農水省の指針で3年ごとに耕作が継続されているかを確認し、臨時転用を更新しなければならない。そういう意味でも、農地としての使いやすさを損なわない発電設備にすることが大切だ」と強調しました。
(新聞「農民」2016.9.19付)
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