「DARK法」
(遺伝子組み換え食品「非表示」法)
が米国で成立
関連/日本の表示制度も危うく さらに厳格な表示求めよう
厳しい表示義務の州法が無効に
GM表示骨抜きの可能性
アメリカのオバマ大統領は7月29日、遺伝子組み換え(GM)食品の表示を人々から遠ざける「DARK(ダーク)法」(GMO「非表示」法)に署名し、連邦法として成立しました。
食品・GM企業の救済が目的
連邦法は、GM食品表示を全米で義務化するという形をとりながら、実は、各州での表示を要求する運動の進展に対抗し、各州バラバラの規制による食品企業の負担を軽減し、救済するためのものです。
まともな食品表示になるか大いに疑問
まともな表示基準が作られるかどうかは大いに疑問です。どの程度の量のGM原料を含む食品をGM表示の対象とするかなど、基準の詳細は2年以内に農務長官が決定することになっています。
しかし、農務省の基準作りをめぐっては、食品企業やモンサント社などの猛烈な巻き返しが予想され、表示が骨抜きにされる可能性大です。
さらに、米国食品医薬品局(FDA)の「GM食品は一般的に慣行品種と同様の栄養価がある」という規定との整合性が大いに問題になります。
食品については、FDAに広範な権限があり、農務省の所管は肉と卵に限られています。FDAが安全と認定しているGM食品に、あえて厳しい表示を義務づけるべきなのかという論争になることは必至です。
罰則・回収命令もないザル法
連邦法の最大の問題は、連邦法と全く同一の基準である場合を除き、州やそれ以下の政治単位による独自のGM表示基準の制定を禁止するとともに、すでに制定されている基準を無効にしてしまうことです。
その結果、7月1日に発効し、表示義務の例外をEU(欧州連合)並みの0・9%未満とするなど、より厳格なバーモント州の法律も無効となるほか、コネティカット州、メーン州などの州法も無効になることは確実です。さらに今後、各州が新たに独自の厳しい基準を制定・実施することもできなくなってしまいます。
また連邦法は、違反した場合の罰則規定も回収命令もないザル法です。
企業はパッケージのラベルに遺伝子組み換えかどうかを表示するやり方として、(1)文字によるもの、(2)記号によるもの、(3)またはスマホなどでしか見ることができないQRコード(2次元コード)へのリンクという3つから選ぶことができます。企業が(3)の方法を選ぶことは確実で、これに対して「一部の人しか表示を見られない」という批判が強まっています。
いま世界の市民運動は遺伝子組み換え食品を中心に動いているといっても過言ではありません。米国政府・多国籍企業が一体になって進めている食料戦略に真っ向から対決しているからです。
その米国では、市民によるたたかいが燎原(りょうげん)の火のように広がり、バーモント州で遺伝子組み換え食品表示法が施行されました。この法律が施行されたことは、日本の市民にとっても大切なことでした。
TPPが成立しても、米国政府は日本に対して自国で表示制度がある以上、表示撤廃を要求できなくなるからです。しかし、多国籍企業などが激しく反撃に出た結果、米国連邦議会が、バーモント州法を無効にする法律を通過させ、オバマ大統領が署名して、この法律は成立してしまいました。
こうなると、日本の私たちのたたかいが大切になってきます。これまでの表示制度では、豆腐、納豆、みそ程度しか表示されず、しかも5%という高い割合での混入を認めているという業界に配慮した制度です。
これでも米国政府や多国籍企業は、撤廃を求めてきました。このままでは表示制度そのものが、危なくなります。米国から食品としてとても安全とは言えない遺伝子組み換え作物が大量に流入し、農家の存在も危うくなります。厳密な表示をさせることが、日本の消費者や農家を守ることになります。
(新聞「農民」2016.9.19付)
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