築地市場の豊洲移転
延期を決定
小池都知事表明
「築地でええじゃないか」
“延期”では市場関係者や
市民の思いにこたえていない
消費者に役立つ市場にならない
東京都の小池百合子知事が、11月7日に予定していた東京・築地市場(中央区)の豊洲(江東区)への移転延期を決めました。
農民連は、「この豊洲移転は、生産者と中小流通業者、消費者に役立つ市場にはならない」との問題意識から、様々な取り組みを進めてきました。
小池知事は「移転延期」の理由を、(1)土壌汚染など安全性への懸念(2)巨額で不透明な費用の増加(3)情報公開の不足の3点を挙げています。
この決断は当然ですが、築地の、中小業者を大事にした、卸・仲卸・荷捌(さば)き場のコンパクトで考え抜かれた機能的な配置をはじめ、一般の消費者が電車に乗って市場を見学し場外で食事や買い物ができる「築地の風情」をなくしてまで豊洲に行く必要はないとの思いから「築地でええじゃないか」と頑張る多くの市場関係者や市民の思いにまでは、答えていないようです。
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「築地移転絶対反対!」築地中央卸売市場アクションで反対の声をあげる参加者=8月27日、東京・築地の波除神社前 |
まさにTPPに対応した市場だ
築地と豊洲の決定的な違いの一つに大型漁船が着岸できるかどうかの問題があります。
豊洲には、大型船が着岸できる全長150メートルの桟橋を造りました。この桟橋で世界とつながり、海外の大型漁船を受け入れる体制を整えています。まさにTPPに対応した市場と言えます。
そのために都民・国民の税金が使われ、中小の流通業者を、移転を口実にふるいにかけることは許されません。
現在地での再整備を進めていた2010年10月の都議会で、当時の石原慎太郎知事は「再整備は十数年かかる致命的な欠点がある」と発言し、豊洲移転を決めました。
現在地で再整備できるはずだ
そして移転先は、東京ガスが、石炭からガスを製造した跡地に有害物質を残したまま埋め立てた土地のため、一般の不動産取引では買い手のつかない「汚染地」です。それを知りながら購入したことが問題の発端です。
東京都は、築地の跡地利用について、「大手不動産業者の『森ビル』に検討を委託」していたことが明らかになるなど、利権がらみの「疑惑」も報道されています。
現在地再整備について、建築エコノミストの森山高至さんが、「新宿駅や渋谷駅は営業しながら改築している。築地ができないわけがない」と指摘するように、豊洲移転でなく現在地再整備で「世界の築地」を守ることが求められています。
(農民連常任委員 齋藤敏之)
(新聞「農民」2016.9.12付)
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