地域の話題
あれこれ
千葉県
小倉 毅
作り手失った田の受け手も高齢者
巻き返す力 地域守る力感じる
田植えの準備で忙しかった3月、千葉県の印旛沼周辺の水田地帯にある一つの集落で次のようなことがありました。
体調の不良と高齢化を理由に
2軒で20ヘクタールを耕作していたライスセンターが、相棒の体調不良と高齢化を理由に急に解散するというのです。年齢は70歳代半ばです。「あんなにがんばっていたのに……」「預かっていた田んぼは誰がやるんだべ」など、野良で話題になっていました。
すると間もなく、生協との契約栽培や土地改良の役員、田んぼの集積化など、地域農業のリーダーとして信頼も厚かった大規模経営農家が急死。73歳でした。
この2つの出来事で、つくり手を失った田んぼは35ヘクタールです。慌てて地域の比較的規模の大きい仲間が集まり、調整した結果、一定の集積化も進み、何とかつながりました。
しかし、その受け手のほとんどが同世代です。「『できねえ』って言ったら、この地域の田んぼはどうなるんだろう」と、受け手の一人が数年後を心配します。
7月の参議院選挙で、農民連会員を回ると、「もう米はやめた!」と、機械の更新をきっかけに75歳の人は、畑作一本に切り替えていました。85歳でかっぱを着て、雨の中、トラクターで時期遅れの代かきをしていた会員は、「トウモロコシの収穫が終わって、来年のためだよ。田植えをするわけじゃないんだ。米じゃやっていけないから」と、田んぼを畑作に切り替え、がんばっていました。
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稲の生育状況をみる小倉さん |
がんばる力強さ百姓の生き様を
こうした姿に、力強さ、百姓の生き様を感じましたが、どちらも後継者はいません。「どんなに規模をでかくしても、どんなに集落営農で努力しても、1万円の米価ではだめだ!」「TPP以前の問題だ!」など、TPPと低米価、農政に対する不満は、異口同音に聞かれました。
1人区での野党の前進は、「諦めたらそこで終わり」という土俵際で、「このままではだめだ」という地域や農業に対する思い、巻き返しに転じる力を感じます。地域(農業・農地)をいかに守っていくのか。まずは、欧米並みの生産コストを保障する政策を実現することです。そのことの重要性を改めて実感しています。
(新聞「農民」2016.8.29付)
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