「立」と「寝」双方が力を合わせ
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「広辞苑」第5版で調べても、「立百姓」という言葉は出てこない。青年劇場が公演する「郡上の立百姓」は、原作者の、こばやしひろしさんの創作語だと思うが、見事に郡上一揆の農民のあり様を表していると思う。
郡上一揆の会が発行する「郡上一揆の会だより」第71号によれば、青年劇場の俳優さんや演出スタッフの方たちが郡上の地を訪れ、リーダーの福山啓子さんが「郡上はとても広くて、風景は美しかった。これだけ広い土地で徒歩で連絡をとりつつ一揆を進めていったというスケール感を体験できたのが大きかった」と語っている。
生家の近くに立つ前谷村定次郎の顕彰碑=郡上市白鳥町(「郡上一揆の会」和田昌三さん提供) |
この広い郡上の95%が山林であり、宝暦五年(1755年)の一揆のときも、TPPで壊滅的な打撃を受ける今も、まったく変わらない典型的な中山間地が「郡上」である。
「立百姓」の伝統を守るなら、この地の農と生活を成り立たなくさせるTPPに、断固立ち向かわなければならないと思う。しかし、一揆当時も立百姓と寝百姓が存在したが、現在も「立」と「寝」の両方があり、現時点では寝の方が大きな勢力を持っているようにみえる。
しかし、一揆当時、悪政は「藩」であったが、今は相手が国政である。徒歩での伝達手段しかなかった一揆当時とは違い、今は世界の動きが瞬時にわかる。そして伝えられる情報がどんなものであるかにより、市民の判断、行動(投票)が大きく左右されることになる。
この郡上は戦後、行政の言うがままに植林を行い、95%の林地の8割を人工林が占める。木材が自由化されて安くなり、伐期を迎えた杉、ヒノキが間伐も十分にされないまま放置されている。
杉林やヒノキ林には下草も生えない。鹿や猿やイノシシも山に食べものがないので、里へ出て、農作物を食べなければ生きていけない。
一昨年、4000頭以上の鹿が捕獲された。獣害と高齢化で美田が耕作放棄地に化け、檻(おり)や柵のなかで、人間が農業をしている。苦労して「米」をつくっても、低米価で再生産には程遠い。
こうした悩みは、ほんの一部である。どうやって中山間地の郡上の「農」と「集落」を守っていくことができるのか。一揆の頃、農民は豊作を心から喜び、集落のみんながその喜びを分かち合ったと想像できるが、今は、減反していて豊作だと米価が下がり、農民は心から喜べない。世界には、飢えで死ぬ人間がいるというのに。
「立百姓」も「寝百姓」も力を合わせて一揆を起こすときだと思っている。こうした思いを青年劇場の「郡上の立百姓」で感じ取ることができれば最高である。
[2016年8月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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