「農民」記事データベース20160829-1227-05

全国研究交流集会 分科会


第1分科会
国保・税金などの要求運動

住民税まで見すえた
申告運動が重要

 第1分科会には、約30人が参加しました。

 本部税対部長の村田深さんは、所得税の節税だけで終わらせず、住民税まで見すえて収支計算することの重要性を指摘。医療費や介護保険の負担が重くなっている現状に対処するには、住民税非課税世帯の保険料や自己負担額が軽減される制度を積極的に活用することが重要だと強調しました。

 4人の参加者が実践報告。青森の須藤宏さんは、税金の払いすぎがわかったら、過去5年分を見直して「更正の請求」を行って返してもらおうと呼びかけました。大阪の中西顕治さんは、税金の実務を知らない専従者向けに計算の勉強会を開いてきたことや、固定資産税・相続税の負担に苦しむ都市の不動産兼業農家向けに「税金ノート」の特別版をつくった経験を紹介しました。

 奈良の谷原一安さんは、経営を継承して税金申告に苦労し、農民連に相談。今は相談員を務める自らの経験を語り、「相談員は税理士ではない。専門知識は少なくても、『手びき』と『ノート』を活用し、会員と学び合うことで役に立てるし、レベルアップもできる」と述べました。

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第1分科会。自主申告運動のレベルアップについて具体的事例を出しながら議論しました

 山形の梶昇司さんは、実例から学ぶ学習会で農家を集めていることを報告するとともに、倉敷民商弾圧事件の教訓にもふれ、権力につけ込まれないためにも仲間の団結が重要だと語りました。

 参加者全員が発言し、経験を交流しました。


第2分科会
生産と多様な流通、地域づくり

地産地消、農福連携など
取り組みを多彩に

 第2分科会(生産と多様な流通、地域づくり)では、4人が基調報告を行いました。

 島根県農民連の長谷川敏郎さんは、おくいずも農民連の米産直について語り、「農家が再生産できる価格をめざす」ことを目標に、ブランド米「仁多米」の産直に取り組み、結成当時5人だった農民連会員は1年で倍になりました。「さらに生産者を増やし、会員・読者拡大に結びつけたい」と意欲的です。

 和歌山・紀ノ川農協の宇田篤弘さんは、紀ノ川農協が2001年にファーマーズマーケット紀ノ川・ふうの丘直売所をオープンし、同時に社会福祉法人と協力しながらカフェを併設したことを報告。障害者を従業員として雇い、農業や農産物加工にも携わってもらいながら運営していることを報告しました。

 奈良県農民連の水井康介さんが報告したのは、学校給食の取り組み。地場農産物の使用割合を増やすことをめざして、保護者、生産者が主体的に運動を進め、愛媛県今治市の実践に学びながら、学習・懇談を繰り返しました。大和郡山を先駆けに、橿原市、宇陀市などに広がっていきました。

 農民連食品分析センターの八田純人さんは、分析センターでの検査を通じて、生産をどう支えるかという立場で発言。検査できる農薬数が格段に増える新検査機器導入募金への協力を訴えました。


第3分科会
再エネ広げ、原発ゼロへ

地域資源を農業守る力に
農民連が運動を担おう

 「再生可能エネルギーを広げ、原発ゼロへ」をテーマにした第3分科会では、自己紹介に続いて、京都の安田政教さんと福島の佐々木健洋さんが報告しました。

 安田さんは、新日本婦人の会京都府本部とともに市民出資を募り、今年5月、京都産直センターの屋根上に太陽光発電を設置。出資者には10年間産直センターの果物を届けるという「わたしのでんき 自然エネルギー産直」の取り組みを報告しました。

 佐々木さんは、「自分たちが使う電気は、自分たちでつくろう」と、世帯会員数1400戸分の年間消費電力6000キロワット分の太陽光発電を設置してきたことを報告。「地域の資源は地域で活用し、地域内でお金が循環する社会にしていこう。その運動を農民連が担っていこう」と呼びかけました。

 討論では、「市民出資の出資金の扱いは?」「発電施設の税制上の扱いは?」「農民連で再エネ事業に取り組む際の事業主体はどうしたらいいか」など、実際に取り組むうえでの実践的な質問が数多く出されました。

 助言者の愛媛大学の村田武さんは、「政府の『バイオマス産業都市』に行政が申請し認可されれば、バイオマス事業などがやりやすくなる。また『農山漁村推進活性化機構』なども活用し、自治体を巻き込むくらいの意気込みで進めていこう」と提案しました。


第4分科会
生産と運動の担い手をどう作るか

奈良の就農支援に学び
各地の経験を交流

 第4分科会は「生産と運動の担い手をどう作るか」をテーマとしました。

 まずは奈良県の森本吉秀会長から県連の新規就農者支援の取り組みについて報告がありました。森本会長は「就農者が問題に直面した時に、いかに助けになれるかがカギ。最初のうちは、何か起こると駆けつけて相談に乗った」と述べ、「『困ったときは農民連に』と新規就農者が言ってくれるようにまでなった」と紹介しました。また、新規就農者の「経営相談に乗れる材料を持っておくことが大切」とも話しました。

 報告を受けて、質問や事例報告など14人が発言しました。「集落営農の担い手がいなくなってしまう」「耕作を頼まれてやれないとは言えない」などの困難な状況が報告されるとともに、「売り先の開拓はどうやっているのか」「新規就農者の情報はどこから得ているのか」といった疑問が出されました。

 また、千葉からは若手生産者が生産法人を作っている様子とともに「みんなでやっていると希望が見えてくる」と報告があり、群馬と茨城からは、資材会社が就農支援を行っている現状や、自治体を巻き込んでの活動など、展望も語られました。

 また茨城県の奥貫定男さんからは農民連本部に対し、「担い手対策室のようなものを作ってほしい」という要望も寄せられるなど、活発な意見の交流が行われました。


第5分科会
TPPと農政転換のたたかい

世論と運動の強化がカギ
ネットワークの拡大を

 第5分科会では、TPPの批准を阻止するたたかいをどう進めるかについて議論しました。

 冒頭に報告した宮城の鈴木弥弘事務局長は、JAグループや医師会、漁協を含む27団体からなるTPP反対のネットワークを築き、参院選や県議選での野党候補の勝利につなげてきた経験を紹介。TPPの批准を阻止するには「世論と運動をどれだけ広げられるかにかかっている」とし、そのために全力を挙げる決意を表明しました。

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TPP批准阻止のたたかいについて議論した第5分科会

 新潟の鈴木亮事務局長は、TPPで経済がよくなるのではないかと幻想を抱いている人がいまだにいるとし、多くの人にTPPの中身を知ってもらう機会を提供していくことが大事だと発言しました。このため、「TPPを考える」ことをメーンテーマに「サマーフェスタ」を開催し、地元アイドルグループなどによる音楽、地酒や食べ物を楽しみながらTPPについて学ぶ機会を持つことを紹介。テーマを幅広くしたことで、JA新潟県中央会や長岡市教育委員会も協賛団体となるなど、賛同が広がっていると強調しました。

 分科会ではまた、足を運んでいない地元の農協やこれまで結びつきの弱かった農民団体や労働組合も対象に、TPP反対のネットワーク拡大に向けた働きかけを強めていくことが重要だとの意見が出され、参加者の共感を得ていました。

(新聞「農民」2016.8.29付)
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2016年8月

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