ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域会議
農業つぶしのTPP協定
会議で危機感の表明相次ぐ
農民連国際部副部長 岡崎衆史
反対運動さらに広げ
必ず葬り去ろうと決意
農民連も加盟する国際農民組織ビア・カンペシーナの東南・東アジア地域会議が6月2日まで2日間、フィリピンの首都マニラ近郊のフィリピン大学構内で開かれました。会議では、TPPなどアジアで進むメガ貿易圏構築の動きへの危機感の表明が相次ぎ、これとのたたかいを強化することを確認しました。TPPやWTO(世界貿易機関)体制下での米の輸入の押しつけに反対する運動を強めることでも一致しました。
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地域会議に先立って行われた女性会議 |
情報共有や活動交流を促進する
ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域の指導部にあたる国際調整委員のヘンリー・サラギ氏(インドネシア)とユン・グンスン氏(韓国)が情勢について報告。「TPPやその他の自由貿易協定(FTA)、WTO体制の下で、アジアの農民同士を対立させ、農業をつぶし、多国籍企業のためのルールづくりが進められている」と警鐘を鳴らしました。
フィリピンの代表は、「TPPが広がれば、農民が勝ち取った農地改革の成果が無に帰する。TPPの問題点を知らせていかなければならない」と訴えました。
農民連からは、最悪の農業つぶし協定であるTPPに反対する運動を広げ、秋の臨時国会での批准を阻止し、協定そのものを葬り去る決意を表明しました。
アジアのTPP署名国は、日本のほかに、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、シンガポール。加えて、フィリピン、インドネシア、タイ、韓国、台湾の政府が参加意欲や関心を表明しています。こうした動きを受け、この地域のビア・カンペシーナ加盟組織全体として、TPPへの危機感を共有。行動計画として、TPP反対のフォーラム、ワークショップを開催し、情報共有や活動交流を促進することを決め、反対運動を強めていくことを確認しました。
会議では、ASEAN(東南アジア諸国連合)自由貿易地域の深化・拡大、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)などを通じた多国籍企業のためのルールづくりについても警戒を強める必要性があると強調されました。
米の輸入押し付けへの
反対運動の強化も確認
アジア各国で米価暴落の危機
一方、地域会議に先立つ5月31日には、「東南・東アジアの稲作と食糧主権」と題するフォーラムを開催。フィリピン農村開発センターのロメオ・ロヤンドヤン氏が基調講演を行い、WTO体制下でフィリピンが行う米の輸入規制が予定通り2017年で終了した場合、「外国からの安い米の流入のためフィリピン稲作は現状では生き残れない」と警告しました。
韓国の代表は、フィリピンに先立って15年に輸入規制をやめ、関税化に踏み切り、米価が暴落したと発言。これへの農民の抗議を政府が弾圧し、69歳の農民が放水銃で撃たれ、いまだに昏睡状態にあるとし、政府の対応を厳しく非難しました。
農民連は、WTOの下で押し付けられる77万トンのミニマムアクセス米に加え、TPPで新たに設けられるアメリカとオーストラリア向け輸入枠(7万8000トン)がさらに米価を押し下げることになると告発しました。
ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域会議は年1回、この地域の加盟組織が集まり、活動を交流し、1年間の行動計画を立てるために開催。今年は9カ国から10団体が出席しました。農民連からは岡崎と武田れい子女性部副部長(奈良県農民連)が出席しました。
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次号は、武田さんのリポートを掲載します。
(新聞「農民」2016.7.18付)
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