抱負・農民連への期待など
太田 義郎新会長に聞く
全商連の新会長はお米屋さん
(名古屋市中村区)
全国商工団体連合会(全商連)の第52回定期大会が5月に開かれ、新会長に太田義郎さん(72)が選出されました。太田さんは、名古屋市中村区で「お米の太田屋」を営むお米屋さんです。太田さんに新会長としての抱負や農民連に期待することなどについて聞きました。
“地域おこし“の運動を
農民連の皆さんと一緒に
私たち中小業者の生き残る道を追求
――全商連の定期総会でどのようなことが決まったのですか?
戦争法の廃止と消費税10%への引き上げを中止させ、中小業者の時代を切り開くために、国民的な共同を広げ、地域に打って出て、強大な民商(民主商工会)を建設する方針をつくり上げました。
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名古屋市の店の前で |
その一環として、地域循環型の地方経済を確立するための具体的な政策づくりや運動に取り組み、それを地域の諸団体と手をつないでやっていこうということを確認しました。
実際のところ、中小業者は激減しています。一般の市民のくらしも変化し、労働は短時間のシフト制が増え、賃金も上がらず、家庭での食事の機会も減っています。そういう社会の変化に対して、これまでごく身近にあった米屋をはじめ、八百屋、肉屋、薬屋、魚屋などの商売が立ち行かなくなっています。
そういうときに、中小業者が生き残る道として、自分たちで営業の努力をすることとともに、他の階層とも協力していく。そういう運動ができる民商をつくろうということを提起しました。
生産者と協力して
自らの商品に自信もち
消費者に提供したい
農民連会員さんのおいしい米扱って
――いつから米屋を始めたのですか? 民商運動にかかわったきっかけは?
私の父が戦前の1937年に米屋を始めましたが、その半年後には徴兵されました。戦後もしばらくは、米屋は営業できない状態が続き、再開できたのは53年でした。当時、税務署が無茶な税金の取り立てをしようとしたため、それに対抗するために、中村区の米屋の組合が集団で民商に入りました。
しかし翌年、父が亡くなり、母が米屋を継ぎました。私も学生生活を送った後、28歳で地域に戻り、米屋と民商運動に関わりました。94年から愛知県商工団体連合会(愛商連)の会長に就任し、現在に至ります。
全国の民商の会員、役員が地域のコミュニティーの中心になって住民とともに歩んでいます。私も、消防団の団員を15年務め、子ども見守り隊隊員も現在まで6年間続けています。毎週1回、早朝に通学路に立っています。
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「中小業者の時代を切り開こう」と開かれた全商連第52回定期総会(全国商工新聞提供) |
米屋としては、特別栽培米を基本に農薬を極力抑えた米を、保育園や飲食店などの業務用と、こだわりをもったお客さん用に扱っています。農民連さんとの関係では、業務用に、静岡県の細江町農民組合と取引しており、とてもおいしいと評判です。
米屋なので、各地の米を食べる機会があり、どこの産地の米がおいしいか、だいたいわかっていますよ。
分析センターの力を借り
食品検査運動を積極的に
少々米が高くても理解してもらって
――農業について思うことは?
農林水産業は、人間の生存に必要不可欠なものです。それをTPPで自由貿易を推し進め、経済原理、市場原理だけで片付けようとするのはいかがなものか。人間は大地に働きかけ、大地を耕しながら農地につくり変え、米、野菜、果樹、畜産、酪農などを営んできました。それを政府は、大企業が車をつくるような農業にしようとしている。それで人間が幸せになれるでしょうか。いま低米価で農民は苦労しています。再生産に必要なお金が農民に回らなかったら農業を続けていけません。お客さんには、少々高くても、理解してもらうようにしています。
中小業者も農民も地域経済の主力だ
――今後、農民連に期待することは?
先ほど述べたように、中小業者は地域経済の主体であり、同じように主力である農民たちとの連携で、地域振興に取り組んでゆくことが大事だと思います。中央でも地方でも地域おこしの運動を農民連さんと一緒に進めていきたいと思います。
また、先日、農民連さんから、農民連食品分析センターの新検査機器導入への募金の要請があり、全商連の役員会でよく議論しました。ただ単に募金をするだけでなく、私たちも検査運動に積極的に関わっていくことを課題として検討することを決めました。
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定期総会で新会長としてあいさつする太田さん=5月22日(全国商工新聞提供) |
特に農民と小売業者は、安全な食料、農産物をつくり、それを流通させて消費者に提供していくという社会的責任があります。残留農薬、遺伝子組み換え、そして放射能の検査で分析センターを活用し、生産者と協力して、自らの商品を自信をもって消費者に提供していくことが求められています。
こうすることで、風評被害を打ち破り、業者の営業を守っていくことにつなげたいと思います。農民連のみなさんと協力しながら、一緒に運動を進めていきましょう。
(新聞「農民」2016.7.18付)
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