講演会
ゲノム編集による
食用作物育種と社会的課題
急速に普及する新技術
生物多様性への悪影響が不安
たねと食とひと@フォーラムは6月16日、都内で講演会「ゲノム編集による食用作物育種と社会的課題」を開き、約50人が参加しました。講師は、北海道大学安全衛生本部の石井哲也教授が務めました。
ゲノム編集とは、酵素を用いて、動物や植物の設計図である遺伝情報を書き換える技術で、従来の遺伝子組み換え(GM)技術に代わる方法として近年急速に普及しています。
石井氏は、作物の育種法の過去から現在までを振り返った後、GM技術が生物多様性に影響をもたらす可能性があること、GM技術の研究・開発について、施行側、推進側に国民への説明責任があることを指摘しました。
ゲノム編集作物が、国民に円滑に受容されるかについては、「人々がGMとゲノム編集の違いを十分に理解しているようにはみえない」「生命倫理観から拒否する人々は一定数存在し続ける」ことなどをあげ、「当面はノー」だと述べました。
カ議定書の適用十分考慮すべき
また、生物多様性の保全や利用に悪影響を及ぼす可能性のあるものについて規制をすることを定めた「カルタヘナ議定書」をあげ、「ゲノム編集も議定書の目的を十分に考慮し、その適用も考えるべき」だと指摘しました。
さらに、ニュージーランドでは、環境省が「ゲノム編集による作物育種等は規制すべきでない」と結論付けたのに対し、高等裁判所は、規制対象外とする環境省の決定を棄却したことを紹介しました。
最後に、今後、リスク(危険性)の明確化、規制方法の確立、トレーサビリティーと表示のあり方などをよく検討していく必要性を語りました。
(新聞「農民」2016.6.27付)
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