「農民」記事データベース20160627-1219-01

TPPで農業をつぶす
安倍政治ノーの審判を


“1%“の農産物輸出が農業を救う?
安倍政権の二重三重のゴマカシ

 32の1人区すべてで野党統一候補が実現し、どの選挙区も大激戦になっています。また、自民党「不支持決議」は東北5県や長野、高知、佐賀などの農政連に広がっており、農協改革やTPPなど、「今までの自民党の農業政策を考えれば、推薦はできない」「これだけの仕打ちを受けてまだ自民を推薦するのか」(佐賀新聞、6月14日)との声が強まっています。

 こういう動きに危機感を燃やし、安倍首相は、8日の山梨を皮切りに山形、奈良、長野、大分、岩手、青森、宮城など、1人区の遊説に躍起になっています。

画像
安倍首相(自民党ホームページから)

 外国メディアが、破たんしたアベノミクスを「へたり馬」と酷評し、「アベ経済」が救急車で搬送される漫画をのせるなどの批判が強まるなか、安倍首相は欠陥「アベノミクス車」の「エンジンをさらにふかす」と声を張り上げています。その一方、「野党には経済政策がない」「気をつけよう。甘い言葉と民進党」などと、野党攻撃に躍起です。

 「気をつけよう。甘い言葉と安倍政権」

 農業では「大切な農業を守ってゆくために農業改革を進める」「TPPを生かして2020年の農林水産物輸出目標1兆円を1年前倒しで達成する」の二つが決まり文句。

 「大切な農業」を、なぜ公約・国会決議違反のTPPでつぶすのか。農業総生産額の1%にすぎない輸出目標の達成が農家所得を増やすかのようなゴマカシを押し通すのか。安倍首相の演説は、自民党の政策の行き詰まりを示しています。

 安倍首相の言い方を借りれば、「気をつけよう。甘い言葉と安倍政権」というべきです。

 農産物の輸出目標は総生産額の1%

 世界最大の農産物純輸入国である日本が、農産物の輸出によって農業の未来が開かれるかのように描き出すのは、二重三重のゴマカシです。

画像  第一に「農林水産物輸出目標1兆円」のいい加減さです。図1のように、1兆円の半分は輸入農産物を原料にした加工食品、4割近くは水産物と林産物です。

 「国産」原料は水だけのポカリスエットやラムネ、輸入大豆や小麦、砂糖が原料のみそ、しょう油やインスタントラーメン、クッキーの輸出がいくら増えても、それは輸出の「水増し」にすぎず、農家の所得が倍増するわけがありません。

 日本酒はともかく、輸出される米菓の原料はミニマムアクセス米。日本の農家が生産し、輸出される農産物は、せいぜい835億円〜1000億円。日本の農業総産出額8・4兆円に比べれば1%前後にすぎません。

 全国各地の農協がりんごや米、茶、ナガイモなどの輸出にとりくんでおり、その努力は貴重です。しかし農協関係者が「ナガイモ輸出は国内が供給過剰になるのを防ぐためであり、輸出だけに焦点を当てた対策は危険だ」と指摘するように(十勝毎日新聞、15年10月10日)、輸出はあくまでも補完的なものです。

 まして、目標を達成したとしても「1%」にすぎない輸出が「99%」を救うなどというのは、メクラマシかホラ話にすぎません。

 輸出をはるかに上回る輸入の伸び

画像  第二に、安倍首相が政権に出戻りして以来の3年間で、「水増し」の農産物輸出は1700億円増えましたが、輸入はその6・4倍、1兆1200億円も増えました(図2)。差し引き1兆円近くの市場が外国産に奪われたことになります。輸出は輸入の15分の1にすぎません。

 政府は、TPPのもとで農産物の輸入は増えないと試算していますが、これは大ウソ。重要5品目も、それ以外の品目もゴールなき完全自由化・関税撤廃に突き進むTPPのもとで、農産物の輸入が激増することは必至です。

 これに「1%」の輸出で立ち向かうなどというのは、子どもだましにもなりません。

 今求められているのは、世界人口の1・8%にすぎない日本が、世界に出回る食料の5〜16%を買いあさっているという事態からの脱却であり、「安全な食料は日本大地から」をめざして、食料自給率を大幅に引き上げることです。断じてTPP参加でも「輸出産業化」でもありません。

 「TPP断固推進。 大ウソつきの自民党」

 自民党は12年の衆院選挙で、「TPP断固反対。ウソをつかない自民党」のポスターを貼りだしました。

 安倍首相がどんなに開き直っても公約や国会決議に反して、「TPP断固推進。大ウソつきの自民党」の道を突き進んでいることは明らかです。

 需給責任を放棄して米価を大暴落させ、家族経営を目のカタキにして10アール1万5000円の戸別所得補償を半減して農家の苦しみに拍車をかけ、農協・農業委員会「解体」法の強行など、安倍政権が農業と農村にとって許しがたい敵であることはいよいよ明らかです。

 アメリカでは二人にしぼられた大統領候補がTPPに猛反対し、交渉をごり押しした通商代表が「年内のTPPの議会通過は難しい。年を越せばTPPの行方は不透明になる」と言い出しました。

 「TPP押しつけなどの強権政治に反対すること」を共通政策に掲げる野党統一候補の勝利と、一貫してTPP反対を主張する勢力の前進で、TPPをストップさせましょう。

(新聞「農民」2016.6.27付)
ライン

2016年6月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2016, 農民運動全国連合会