農業者らの被ばく・健康被害に
国は責任を果たせ
福島の生産者が「怒りの行動」
福島県農民連
東電本社抗議、国・本社と交渉
2011年4月26日、福島第一原発事故の被害を受けた農民が、「怒」としるした鉢巻きを額に締め、初めて東京電力本社に押しかけた「怒りの抗議行動」から5年。福島県農民連は、今年の4月26日も東京電力本社前での抗議行動や、東電・国との交渉に取り組み、県内各地から3台のバスに100人の生産者が分乗して上京、怒りの拳を上げました。
「福島では、放射線管理区域より高い線量のなかで作業している農民が今もたくさんいる。40〜80万ベクレルという高線量のなかで一日中、授粉作業に追われる桃農家の苦悩がわかるか!」――東京電力本社前での抗議行動で、こう切り出したのは、福島県農民連の根本敬会長です。「東電は3年連続の黒字経営。昨年は過去最高の経常利益をあげておきながら、その一方で『金がかかるから』と、どんどん賠償を切り捨てている。こんな福島県民への侮蔑、愚弄(ぐろう)は絶対許せない。次世代への責任を果たすため、最後までたたかいぬく」と、力強く決意を述べました。
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「福島切り捨てを許すな!」――怒りのコールが響いた東電本社前 |
鹿児島川内原発即時停止せよ
国会内で行われた国・東電との交渉では、福島県農民連は、(1)鹿児島・川内原発の即時停止、(2)40万ベクレル(放射線管理区域の設定基準)を超える地域・農地への対策、(3)避難区域外の農林漁業者に、2017年1月以降も賠償支払いを継続すること、(4)「年間被ばく線量20ミリシーベルト」を根拠としたあらゆる施策をただちに改めることなどを求めたほか、6つの個別案件についても一つずつ詰めの交渉を行いました。
川内原発の即時停止について、資源・エネルギー庁(経産省)は、「現在の九州地方での大地震の揺れは想定内であり、規制委員会の専門家会合でも停止する必要はないとされた」と繰り返す姿勢に終始。参加者から「原発事故が起きても避難する場所も経路もない。周辺自治体や住民の意見は聞いたのか」「福島第一原発も当時の基準を満たしていたが、実際に事故は起きた。現在の科学では地震の予知ができない以上、まず原発を止めるべきだ」などの声が続出しました。
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真剣な面持ちで交渉にのぞむ参加者たち |
3年以上も求め続けてきた要求
(2)40万ベクレルを超える地域・農地への対策については、福島県農民連がこれまで3年以上にわたって、農地一筆ごとの実地調査や農民の健康被害対策などのかたちで求め続けてきた要求項目です。しかし厚労省は「うちは労働者の被ばく管理規制が管轄で、農業者の被ばくは管轄外」と言い、農水省は「被ばくによる健康被害は厚労省」などと言い、結局、責任の所在がまったくあいまいなまま、長期間問題が放置されています。
今回も交渉開始当初は答弁者もおらず、参加者からの怒りの声に押されて内閣府原子力被災者生活支援チームがかけつけ、(4)の20ミリシーベルトの問題も併せて答弁しました。しかしその従来通りの回答に終始する態度に、参加者から「福島県民だけは、自己責任で被ばく管理しろということか。農業者を含め県民すべての被ばくに、国として責任を果たせ」という怒りの声が巻き起こりました。
個別案件では、酪農家から「牧草地にセシウム対策としてカリウムが散布されたため、そのカリウム過剰の牧草を給与された牛が死亡する事例が相次いでいる。40頭のうち13頭が死んだ」との悲痛な訴えがあり、農水省は「事実関係をよく調査し、必要な対策を講じていく」と回答しました。
(新聞「農民」2016.5.16付)
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