「農民」記事データベース20160516-1213-01

熊本地震
現地リポート

復旧急げ!田植え間に合わぬ

農民連副会長 笹渡義夫

関連/農民連本部移転します

 飛行機内から見た熊本市、益城町は一面、ブルーシートで覆われた家が多数で、被害の大きさを実感するものでした。4月20日〜22日に続いて2度目の熊本の地震被害をリポートします。


田植え直前の水田・水路、
納屋倒壊で農機具大被害

 被災者救援メーデーを開催

 第87回熊本県中央メーデーは、被害の大きい健軍アーケード商店街に会場を変更し、「被災者が希望を持てる救援・復興を」をスローガンにした「被災者救援メーデー」を開催しました。

 集会ではおにぎりと豚汁200食を用意。家を失ったという高齢者夫婦は、スタッフに避難所の実態や不安を涙ながらに訴え、「こうしてもらって本当にありがたい」と語っているのが印象的でした。野党統一候補のあべ広美弁護士も参加し、「被災者の声を政治に届けさせてほしい」と力強くあいさつ。「相談コーナー」で次々に訪れる被災者の声に耳を傾けました。

 熊本県農民連からは笹渕賢吾会長を先頭に6人が参加し、全国から届けられた支援物資から米、野菜、豚肉などの食材を提供して奮闘しました。

 農林水産被害 1000億円に

 熊本県が2日、農林水産被害は1000億円と発表したように、農村部で家屋の倒壊、がけ崩れなどとともに、田植え目前の水田や水路、納屋の倒壊により農機具などにも甚大な被害を受けています。

 菊池市の標高200メートルの高台で米や野菜を作っている県連役員、中路哲雄さん(56)の棚田やゴボウ畑が地震で崩壊し、ひび割れや段差が随所に。中路さんは「復旧を待っていたら、田植えが間に合わない」と役所と相談して事前着工を開始。生協と契約しているゴボウは強い揺れで、先端が折れているものが多く、「だめだろう」と言います。

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段差のできた水田(阿蘇市)

 阿蘇市では、阿蘇の外輪山が随所で大規模な土砂崩れ。また、住宅や道路、農地などが至る所で破壊され、最大で1・5メートルの段差がむき出しになっていました。

 同市の農業用水は豊富な地下水をくみ上げ、パイプラインを張り巡らせて賄っています。昨年結成した阿蘇農民組合会員の竹原祐一さん(阿蘇市議)は、「種もみを消毒した矢先の地震だった」「わかっているだけでパイプ破損75カ所。現在で、同市の水田の4分の1に相当する1000ヘクタール以上が作付け困難になる恐れがあり、また工事が間に合わなければさらに作付けできない面積が増える可能性がある」と指摘します。

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陥没した農道。立っているのが笹渕会長(阿蘇市)

 阿蘇駅には脱線した列車が線路をふさぎ、温泉施設も破壊され、宿泊客のキャンセルが相次いでいるといいます。竹原さんは「農業も観光もダメになったらこの町はどうやって生き延びていくのか。7月までに田植えができれば何とかなる。工事を急いでほしい。耕作できなかったら満額とは言わない。何割かでも補助してもらいたい」と語っています。

 建物の60%以上が全壊の西原村

 田島敬一村議の案内で訪問した西原村は、建物の60%以上が全半壊する甚大な被害を受けています。田島議員は、「今回最も被害が大きかったのはこの村かもしれない」と沈痛な表情で指摘します。中でも風当(かぜあて)集落(約30世帯)、古閑(こが)集落(約40世帯)などは、新築の家屋1〜2軒を残してほぼ全滅状態。屋根が地面に崩れ落ち、一階が押しつぶされ、いまにも倒れそうに傾いている家屋が無残な姿をさらしています。

 宮崎県と熊本をつなぐ「県道熊本高森線」が崖崩れと橋の破損で通行止めになり、住民に大きな影響を与えています。沿線にある野菜や加工品、工芸品など、年間4億円を売り上げる第3セクター「萌の里」が営業中止となり、農家は出荷できません。また多くの営業施設が閉店に追い込まれ、生業を奪われています。

 村議会の産業教育常任委員長の山下一義議員は「村の70%の水田が作付けできない可能性がある」と指摘。また、「屋根瓦の修繕を業者に頼んだら40人待ちと言われた。梅雨時に間に合いそうもない」と言います。九州や全国の業者を熊本に集中させることはその気になればできます。田植えに間に合うように政府や県にそれぞれの立場から対策を要求しようということになりました。

急がれる被災者の命つなぐ物資支援

 「野菜欲しい」の切実な声しきり

 被害の激しい益城町の住宅街で全国から寄せられた米、野菜などが入った段ボールを所狭しと並べ、近所のみなさんに配ったときのこと。避難所にいるという方は、毎日、おにぎりや弁当、カップラーメンを食べているため「お年寄りがおなかを壊している」と言い、「みんな野菜に飢えている」と訴えられました。熊本市内の避難場所になっている公民館に野菜やパイナップル、ジュースなどを届けた際に館長さんも「野菜が欲しい」と切望されていました。

 一人残らず震災被害をのりこえて生産のラインにつけるように全力をあげなければなりません。全国から野菜を届けてください。

 引き続き、救援募金の協力をお願いします。

▼ゆうちょ銀行から振り込む場合 記号 10030・番号 61671711・名義 農民連災害対策本部
▼他の金融機関から振り込む場合 店名 ゼロゼロハチ・店番 008・口座番号 普通 6167171・名義 農民連災害対策本部


農民連本部移転します
 農民連本部と農民連ふるさとネットワークは5月30日から新事務所に移転します。新しい住所、電話番号をお知らせします。
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(新聞「農民」2016.5.16付)
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