安倍政権に痛撃を与え、
TPP批准を断固阻止する
2016年4月25日
農民運動全国連合会会長 白石淳一
一、「日本が率先して動き、早期発効に向けた機運を高める」(安倍首相)との並々ならぬ決意のもとに審議が始まったTPP協定承認案と関連法案は、たった数日の審議で頓挫(とんざ)し、参院選後への先送りが決まった。
短期間の審議で、真っ黒塗りの資料が象徴する異常な秘密主義と、正真正銘の国会決議違反が白日のもとにさらけ出された結果である。追い込んだのは、TPP反対運動と野党の力であり、追い込まれたのは安倍自民党・公明党政権である。私たちは、承認案の撤回と関連法案の廃案、TPP批准の中止を強く要求する。
一、内容からいっても、国会での徹底的な検証・審議という民主的なルールからいっても、TPP協定批准の強行には、なんら道理がないことがますます鮮明になった。
農民連はTPPテキスト分析チームとともに、(1)TPP協定には関税の撤廃・削減をしない「除外」規定が一切存在しない、(2)「聖域」5項目のうち「無傷」の品目はただの一つもない、(3)付属書で、日本だけが農産物輸出大国5カ国とさらなる関税撤廃に向けた見直し協議を特別に義務付けられていることを解明し、「TPP交渉で最善の結果を得た」「勝利」などという“アベ過ぎる”開き直りが欺まんに満ちたものであることを指摘してきた。
国会審議で、石原TPP担当相と森山農相は、これらがすべて事実であることを認めざるをえなかった。政府が宣伝する
「成果」なるものが全くのウソであったことが、短期間の審議を通じて明白になったのである。
秘密主義と国会審議のお粗末ぶりもかつてない。国会決議は交渉過程の情報提供を義務づけたが、政府は黒塗り資料を提出したうえに、交渉内容を知る甘利前TPP担当相や首席交渉官は“雲隠れ”し、「何も知らない」後任大臣は「交渉経過は答弁できない」の一点張りだった。情報隠し、雲隠れ、「何も知らない大臣」、さらに自らの政治資金パーティー用に“内幕本”を執筆したうえにシラを切るTPP対策特別委員長――こんな醜悪な“4点セット”を並べ立てたのは、国民をなめきったものといわざるをえない。
一、TPP協定批准強行の失敗と先送りという今日の事態が示しているのは、「独裁」的で強靱(きょうじん)に見える安倍政権のもろさであり、国民をなめきったやり方がいつまでも続くものではないという確かな事実である。
日本農業新聞が3月末に行った調査では、農政モニターの9割がTPPに「不安」、8割が影響試算は「過小」と答えており、同紙が1月に公表した調査では全国のJA組合長の96%が「悪影響あり」、92%が「国会決議違反」と答えている。また、岩手県の全JA組合長が食健連のTPP批准阻止署名に賛同している。
首相周辺は「先送りすれば野党が参院選で『俺たちがTPPを止めた。勝たせてくれればTPPは阻止できる』と訴えかねない」と危機感を示していた(日経4月14日)。野党共闘を大きく発展させ、安倍政権にとっての「危機」を現実のものにする絶好の機会である。
私たちは、政府がTPP批准を断念することを要求し、広範な市民団体、労働組合、女性・消費者の皆さんとTPP反対のネットワークをさらに発展させるとともに、農業・農協関係者の皆さんとの対話・交流に全力をあげる。
TPPを阻止するうえで決定的に重要なのは、7月に行われる参院選で与党を少数に追い込むことであり、そのために全力をあげ、TPPが再審議される夏から秋の臨時国会を意気高く迎え撃つ。
TPPの発効に批准が不可欠なアメリカでは、議会審議の見通しすら立っていない。国民の不安に応えず、アメリカや財界の“期待”にこたえること以外は念頭にない安倍政権に痛烈な打撃を与え、農業を含む国民の利益と主権を多国籍企業に売り渡すTPP批准を断固阻止するために総力をあげて奮闘する。
(新聞「農民」2016.5.2付)
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