「農民」記事データベース20160418-1210-04

TPP暴走列車を
止めるのは今しかない


政府試算に見る
“亡穀・無農”国家の姿

 安倍首相はTPP特別委員会で「TPP交渉で最善の結果を得た」などという“アベ過ぎる”開き直りを連発しています。そこにあるのは、ゴマカシ試算やインチキ「事後対策」を小道具に、なにがなんでも国会批准を強行しようという姿勢です。

 しかし、(1)現在のTPP合意は国会決議違反であり、(2)協定に沿って底無し沼の再協議に入れば、合意で免れた品目も関税撤廃、(3)アメリカの「承認手続き」、アグリビジネスの要求に従って、協定の見直し再交渉に入れば、さらに最悪の事態に入る――。TPPは完全自由化に向けて突っ走る暴走列車です。止めるのは今しかありません。

 暴走列車の行き着く先は

 昨年12月に政府が示した試算は、生産減少額を過少に見積もったうえで、“生産量が減らない対策をとるから、生産は減らない”といっているだけ。試算の名に値しません。

 政府は、これまで13年3月と10年11月の二度にわたって試算を公表しています。改めて振り返ってみると、これらの試算は、政府自身の手で完全自由化の行き着く先を示していたものということができます。

 13年3月試算(A)は、生産減少額が農業総産出額の3分の1に及び、米の生産量も3分の1減、小麦・砂糖は全滅、豚肉・牛肉は7割減、牛乳は半分近く減り、カロリー自給率は27%にまで低下することを示しています。

 この試算の前提は、TPP参加国を対象に関税が撤廃され、事後対策を講じないというもの。

 TPPの行き着く先は関税撤廃です。また、現在政府が検討している事後対策は、牛肉・豚肉の経営安定対策を除けば、「体質強化対策による生産コストの低減・品質向上」であり、ほとんど実質的な意味を持ちません。

 それを考えれば、13年3月試算は、TPPが発効し、再協議などが進んだ段階の姿を示しているといえます。これに、TPP参加国の拡大を折り込めば、もっと悲惨な姿になることは間違いありません。

 “亡穀・無農” 国家にストップを

 10年11月試算(B)は、TPPにとどまらず、日本とEU(欧州連合)のFTA(自由貿易協定)やアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)が実現し、ほぼ世界的な完全自由化が実現した場合の試算。

 生産額は半分に減り、米の生産量は9割減、小麦・砂糖は全滅、豚肉・牛肉は7割強減、牛乳は半分以下に減り、カロリー自給率は14%にまで低下することを示しています。

 しかも、両試算ともに、米や畜産の激減、小麦・砂糖の壊滅による水田と輪作の崩壊が農業全体に及ぼす影響を全く無視しており、被害はこれにとどまるものではありません。

 日米支配層はこれまで、日本農業を土台からひっくり返して“亡穀・無農”国家にする構想を描いてきましたが、TPPは、その決定的な一里塚です。

 暴走列車を止めるのは、乗る前の今しかありません。TPPの発効要件はTPP署名国全体のGDP(国内総生産)の85%を占める6カ国の批准。TPP署名国全体のGDPの18%を占める日本と60%を占める米国が乗らなければ、TPP列車は発車(発効)せず、つぶれるのですから。

(新聞「農民」2016.4.18付)
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2016年4月

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