新潟県村上市瀬波温泉
瀬波バイオマスエネルギープラント
エネルギーと農業の地域循環を
福島県農民連が視察バスツアー
食品残さで発電
熱と液肥も活用
食品残さを活用してバイオガス発電し、副産物として生まれた「熱」と「液肥・堆肥」を農業に活用している農業生産法人がいます。新潟県村上市瀬波温泉の農業生産法人カイセイ農研(株)と、そのバイオガス事業部門の(株)開成です。日本海を望む高台に建つ同社の「瀬波バイオマスプラント」を、福島県農民連の一行が視察しました。
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(株)開成HPから |
一行がまず見せてもらったのが、食品残さの破砕機。瀬波温泉内の旅館や福祉施設、スーパーなどから集められた食品残さは、すでにある程度分別済みですが、ここでスタッフがさらに細かくチェックして異物を取り除き、破砕して、メタン発酵させる発酵槽(そう)に機械で送り込みます。
食品残さだけでなく、酒かすや下水汚泥、刈り草など様々な有機性廃棄物を受け入れ、発酵材料にしていますが、「有機物ならなんでも良いわけではありません。排出者にはきちんと分別してもらい、発酵にベストな廃棄物のバランスをとるようにしています」と、(株)開成の須貝卓也さんは言います。
発酵槽で攪拌(かくはん)しながら1カ月かけて嫌気性発酵させると、メタンを含むバイオガスが発生するので、それを隣接する大型の温室ハウス内に設置された発電機に送り、発電。電気はFIT(固定価格買取制度)を利用して全量、売電しています。発電時に発生した熱は、温室でパッション・フルーツをはじめとした南国フルーツの加温栽培に利用されています。
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温室ハウスで育つパッションフルーツ |
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パッションフルーツは熟すとこんな色に |
農業法人だからこその地域循環
もともとカイセイ農研は、30ヘクタールもの水田を耕作する農業生産法人として1998年に始まった法人で、今でも稲作30ヘクタールのほか、畑作(大豆)を50ヘクタール、南国フルーツの温室栽培15アールを耕作しています。発酵後にできた消化液は、液肥としてこれらの耕作に使用されるほか、もみ殻などとあわせて堆肥にして、余すところなく活用されています。
生産された米やフルーツの一部は、瀬波温泉をはじめ地域内でも「地産地消」されており、こうしたエネルギーと農産物の地域循環の取り組みが、「食品リサイクル・ループ」事業(環境省・農水省所管)として認定されています。
「このループが成功したのは、私たちがもともと農業生産法人で、肥料が欲しくて有機廃棄物処理も手掛けるようになった、ということがカギだと思います。廃棄物処理業と、液肥を使う農業を、自分たち自身で一体の事業として完結できるのが私たちの強みなのです」と話す須貝さん。
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破砕機のある搬入口付近で説明を受けるツアー参加者 |
同社の作る南国フルーツは糖度も高く、きわめて高品質で、高級フルーツ店として有名な銀座千疋屋でも販売されているとのこと。事業面でも順調で、若いスタッフが働く雇用の場としても、地域で重要な役割を果たしています。
(新聞「農民」2016.4.11付)
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