「農民」記事データベース20160404-1208-01

2016年産米作りの
たたかいを始めよう


多様な米づくり、販路の拡大へ
すべての会員、米農家とともに

 市場まかせの国の米政策はもはや限界に

 米価が生産費を大きく割り込んで農家に塗炭の苦しみをもたらしています。こうしたなかで安倍内閣は、米価を回復させる対策には背を向けながら、まやかしの「TPP対策」を打ち出し、今国会でTPP協定の批准と関連法案の成立を強行しようとしています。

 そんな中でも、桜前線は進み、いよいよ苗作りと田植えが始まっています。米の情勢をしっかりつかみ、大いに米作りを進めることが求められています。

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南から田植えがスタート。写真は宮崎市内(3月26日)

 2015年産は、政府と農協系統が強力に推進した飼料用米が前年比2・3倍の42万トンになり、主食用米は5・6%、44万トン減の744万トンとなりました。

 政府は16年産も生産数量目標以下に主食米の生産量を減らす生産調整の「深掘り」を推進する方針です。計画通りなら17年6月末在庫は180万トン。これは9月20日で前年産を食べ尽くす危険な水準で、わずかな過不足で需給と価格の混乱を招きかねません。市場任せの米政策はもはや限界です。

 15年産の市場価格は前年を1俵(60キロ)1100円ほど上回り、1万2200円程度になりましたが、価格回復にはほど遠い状況にあります。

 それを象徴するのが、外国産米の市場評価を測ることを目的として実施しているSBS輸入米の入札結果です。主食用米は入札枠の約1割の9533トン止まりでした。

 業者は国産米が安いために輸入米には手を出さないのです。

 農水省は、産地と量販店・中外食産業などを直接結びつけるマッチングを行ってきました。これは、TPPを前提に、18年から「農家の自己責任で米を作らせるためのトレーニング」であり、政府が米の需給と価格を安定させる責任をさらに放棄するためのものです。

 しかも、トレーニングというような生易しいものではなく、政府の施策通り規模拡大し、低米価のもとでも維持できる経営体のみ生き残れば良いとする政策です。

 アメリカ産米50万トン。影響「ゼロ」などありえない

 政府は、TPP交渉で7・8万トンのアメリカ・豪州産米の主食用特別輸入枠を設け、さらにМA(ミニマムアクセス)米枠内でも、事実上アメリカ向けとなる「中粒種・加工用」6万トン枠を受け入れました。アメリカ産米の輸入実績は毎年36万トンであり、TPP発効後13年目には、アメリカ産米だけで50万トンもの輸入になり、秋田県の生産量に匹敵します。

 政府は「輸入特別枠」について影響を、「備蓄米買上数量を増やすので影響はない」としていますが、国内の銘柄米が備蓄に回り、安い外米が市場に出回るわけで、市場価格への影響は必至です。

 地域を守り、食を守り、米を守る共同を

 農協中央会(JA全中)がTPP反対の旗を降ろした今、全国の農協や生産者の怒りの声をくみあげ、「TPP批准阻止」「国は米の需給と価格の安定に責任を持て」という農民連の要求と運動はますます重要です。

 食料自給率の向上、食文化、環境保全など、米と水田の果たす多面的な役割を再評価し、米消費減少に対する抜本的な対策の実現など、生産者と消費者、米業者とも思いを共有した取り組みが求められます。様々な団体や自治体などに、「米を守る」共同の運動への呼びかけを強めましょう。

 新日本婦人の会や地域食健連、生協、消費者団体などと地域からの懇談を進め、国民的な運動へと広げ、米政策の抜本的な転換をめざしましょう。

 多様な米作りと準産直米で地域の仲間づくりを

 農水省の各種対策、制度も活用して、多様な米作りで攻撃に立ち向かいましょう。

 流動化する米情勢のもとで、生産地と消費地が直結する動きが加速し、米業者も産地の囲い込みに走っています。

 米作りには「販路の確保」、業者は「産地との結びつき」が、それぞれの生き残りの決め手となろうとしています。先駆的に米業者との信頼関係を築いてきた農民連の準産直米。今こそその実績と経験を大いに生かすときです。

 農民連ふるさとネットワークにも「秋に支払いは可能。年間を通した供給を」「外食向きの多収穫米を面積で契約できないか」などの声が米業者から寄せられ、期待に応えた取り組みが求められています。

 新婦人との産直も話し合いを持ち、結びつきを強め、要望に応える手だてが求められています。

 誰もがこれからの米作りに悩んでいます。会員やつながりのある農家、そしてもっとも厳しい状況に置かれている大規模経営や集落営農組織にも声をかけ、米をめぐる情勢、経営の課題や制度の活用、そして販路など広く話し合いましょう。共同して準産直米の取り組みを大きく広げましょう。

 作ってこそ農民、作ることがたたかいです。TPP批准阻止のたたかいとあわせて、地域の生産を守る取り組みが今こそ求められています。

(新聞「農民」2016.4.4付)
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2016年4月

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