「農民」記事データベース20160328-1207-06

国連女性差別撤廃条約「総括所見」

日本政府は“勧告”実施せよ

スイス・ジュネーブでの日本審議に
久保田みき子農民連女性部長が参加


 国連の女性差別撤廃委員会が3月7日、日本政府に対し、「前回の勧告への対応がなされていない」とする、きわめて踏み込んだ内容の、画期的ともいえる「総括所見」を発表しました。同委員会は、1979年に国連で採択された「女性差別撤廃条約」にもとづいて、締約国の差別の是正状況を定期的に審議し、「総括所見」として各国政府に勧告しています。

 今年2月、スイス・ジュネーブで7年ぶりの日本審議が行われ、日本婦人団体連合会(婦団連)や新日本婦人の会も加盟する日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク(JNNC)からも80人の代表団が参加し、審議傍聴や意見表明を行いました。農民連女性部も全国の女性部にカンパを呼び掛け、部長の久保田みき子さんを婦団連代表団の一員として現地に派遣。またNGOリポートの作成では農山漁村女性分野を担当するなどの協力を行ってきました。

 久保田さんの現地リポートを紹介します。


 今回、JNNCの代表団に参加し、国連の審議という場が体験でき、多くのことを学ぶことができました。

 日本政府に対しては、5時間もの本審議が行われ、日本政府からは、外務省、内閣府、法務省、文科省、厚労省、警察庁が出席していました。しかし日本政府の報告の多くが、「男女共同参画社会基本法で対応している」というものでした。

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国連での本審議(写真は2枚とも婦団連提供)

 国内法に反映を

 委員からは、「国内法に“差別”の定義をもうけるべき」、「選択議定書(※権利侵害を直接国連へ通報できる制度が盛り込まれている)の批准がなぜできないのか」、また「貧困が広がるなかでの社会的に弱い立場の女性の保護はどうなっているのか」、「女性への暴力の防止と人権擁護は?」といった、これまで繰り返し勧告を受けながら、進展が見られない課題に、委員からの質問が集中していました。しかし日本政府は従来の回答を繰り返すばかりで、まさに無責任な態度に終始していました。

 「慰安婦」問題でも、「強制連行された事実はない」「性奴隷という表現は当たらない」と主張する日本政府に、厳しい質問が相次ぎました。総括所見でも「(昨年12月の)日韓合意は、被害者中心のアプローチをとっていない」と指摘されています。国連の場で、歴史の事実を否定する安倍政権に、怒りとともに恥ずかしさを感じずにはいられませんでした。

所得税法見直し、家族労働認めよ

 NGOの意見も

 今回の「総括報告」では、農山漁村女性の分野でも、「所得税法で家族労働が評価されず、女性の経済的自立を妨げている」と指摘し、同法の見直しが勧告されました。これは私たちNGOの意見が取り入られ、実ったものです。

 同委員会は、政府審議に先立って、NGOからも意見聴取を行いましたが、委員の皆さんは、事前に提出してあった私たちのNGOリポートをとてもしっかりと読み込んでくれていて、私たちの意見も真剣に聞いてくれました。そしてこのリポートにもとづいて日本政府にも厳しい質問をしていて、とても感動的でした。

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NGOからの意見聴取の場で、委員に資料を手渡す久保田部長(左から2人目の鉢巻きをした人)

 また、福島第一原発事故後の健康問題に関連して、年間被ばく線量20ミリシーベルト以下の区域を避難指示解除しようとしていることに対し、「女性は男性よりも放射線の感受性が強いという国際的に認められたリスクを考慮するよう推奨する」と指摘して、福島県内の女性・少女への医療などの施策の拡充を勧告しました。これもNGOの意見聴取が生かされたもので、画期的な内容だと思います。

 日本政府は、さまざまな問題で「世論の動向を見守る」などと言い逃れに終始していましたが、多くの委員から「これは(日本も批准した)国際条約であり、その推進のために国は世論のリーダーシップをとる必要がある」との指摘が相次いでいました。私自身も、国際条約の重みを感じた場面でした。

(新聞「農民」2016.3.28付)
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2016年3月

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