「農民」記事データベース20160328-1207-01

高浜原発3、4号機
運転差し止めを決定

稼働中の原発の停止は初

関連/放射能被害の根絶を


福島原発事故の原因究明が不可欠
新規制基準適合だけでは不十分

 滋賀県の住民29人が関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを求めた仮処分の手続きで、大津地裁(山本善彦裁判長)は3月9日、住民側の主張を認め、運転を停止するよう命じました。この決定を受け、関電は営業運転中の3号機を10日に停止しました。裁判所の判断で稼働中の原発が止まるのは初めてです。

 山本裁判長は決定で、「原発の安全対策を講ずるには福島第一原発事故の原因究明を徹底的に行うことが不可欠」と指摘。原因究明が進まない中で、原子力規制委員会によって新規制基準が策定されたこと自体を「非常に不安を覚える」と批判しました。また、新規制基準への適合だけでは安全性の立証は不十分だと明示しました。

 この決定に対し、歓迎の談話が寄せられていますので、紹介します。

今回の画期的決定を力に
老朽の1、2号を廃炉に

ふるさとを守る高浜・おおいの会代表
東山 幸弘さん(高浜町在住・農業)

画像  3月9日、大津地裁は素晴らしい決定を出してくれました。昨年4月14日、福井地裁は「止まっている原発の運転はしてはならない」という決定でしたが今度は「運転中の原発を止めよ」という画期的なもので、世界でも運転中の原発を司法が止めた例はありません。

 福井では裁判官を入れ替えてまでして決定をひっくり返し、1月29日、高浜原発3号機を再稼働させました。その後4号機も再稼働しましたが、2月29日、送電しようとした途端、故障警報が出て原子炉までスクラムしてしまいました。

 30年以上の老朽原発で4年も停止していた原発を再稼働するのに余りにも緊張感のない、手抜き点検しかできない電力会社であること、そして、それと同じくらい緩い基準で良しとする規制委員会であることもわかりました。

画像
高浜原発の北門で抗議行動をする人たち。左側の丸いドームが3号炉、その隣が4号炉=2015年11月8日(東山さん提供)

 原発裁判は、負け続いていたフクシマ以前に戻り、あたかも福島事故はなかったかのような状況に進むのではないかと危惧していましたが、今回の裁判の決定内容ではっきりしました。日本の原発は止める時代から、すべての原発を廃炉にする時代に入ったことを。

 高浜3号、4号だけでなく、40年を超える老朽原発1、2号を廃炉にしましょう。

伊方原発差し止め求める
運動を大きく励ますもの

愛媛食健連会長・伊方原発運転差し止め裁判原告
村田 武さん

画像  大津地裁の仮処分決定は、原子力規制委員会が新規制基準に合格するとした伊方原発の運転差し止めと速やかな廃炉を要求してたたかっている私たちをたいへん励ますものです。

 決定は福島原発事故の原因究明が不十分だと認識し、それだけに新規制基準は不安であり、それに合格したとしてもそれだけで安全性を保証したものとは言えないという考えを示しました。私たちはこの判断はまったく正しいと考えます。

 さらに決定の、過酷事故の際に住民の避難計画の策定が再稼働の重要な条件となるという見解も、それを再稼働の条件にしない原子力規制委員会に対するきつい批判であり、伊方原発が日本一細長い佐田岬半島の付け根に立地しており、半島の住民5000人の安全な避難が困難であることをないがしろにする四国電力や、形ばかりの避難訓練で再稼働に同意した中村時広愛媛県知事への痛撃です。

 また、決定を読むと、多くの争点で関西電力の立証や説明が不十分であったことを厳しく指摘しています。これは伊方原発裁判で木で鼻をくくったような対応に終始してきた四国電力の心肝を寒からしめるものです。

国の思惑を打ち破る決定
原発ゼロ運動に大きな力

福島県農民連前会長
亀田 俊英さん

画像  川内、伊方など原発立地に行って、東電福島第一原発事故下の福島県民の実態を知らせ、再稼働反対を訴えてきましたが、「苦渋の選択」「地元経済を優先」という言葉ではね返され、悔しい思いをしてきました。

 今、福島の避難指示区域は帰還困難区域を除いて、指示解除に向けて国の工作が行われています。丸5年が過ぎても、事故原因の究明もされず、汚染水は増加し、国が言う懸命な除染作業でも安心して帰還できる環境になってはいないのが現状です。

 今回の決定は、自らの責任を棚に上げて帰還を強引に進め、早く「福島を忘れさせる」国の思惑を見事に打ち破りました。福井地裁の大飯原発再稼働差し止め決定とあわせて、「原発安全神話」「経済効率優先」の過ちを糾弾されながらも開き直り、「原発再稼働、原発の輸出」を進める国の政策を正面から批判し、いっそう深刻になる福島の実態を真しにとらえた画期的なものです。

 「農業と原発は絶対共存できない」と「原発なくせ」の運動をしてきた国民にとって大きな力になります。激しい巻き返しも始まっています。長期化することで新たな問題、分断も出てきますが、「原発ゼロの日本」を目指す運動を第一に進めていきたい。


福島原発事故5年

日本原水協と民医連がシンポ

放射能被害の根絶を

画像  原水爆禁止日本協議会(日本原水協)と全日本民主医療機関連合会は3月11日にシンポジウム「東京電力福島第一原発事故5年 チェルノブイリ30年 核の危険 放射能被害の根絶を」を都内で開催し、それぞれの分野から報告しました。

 日本原水協理事でわたり病院医師の齋藤紀さんは政策による打撃で生活再建どころか資産者の格差が広がりつつある現状を指摘。被災者の心身両面での健康問題が増え、「臨床医(町医者)が大きな役割を持っている」と話しました。

 また、子どもの甲状腺がんについても「データをもとに冷静な対処が必要」と述べました。

 弁護士の山添拓さんは生業訴訟の中で見てきた福島の様子を示しながら、「人が住まないと家は荒れていく。財物的な意味だけでなく思いでも奪いさられていく」と話しました。

(新聞「農民」2016.3.28付)
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2016年3月

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