「農民」記事データベース20160314-1205-04

電気を選んで 社会を変えよう

何が変わる? ポイントは?
(1)

関連/素朴な疑問 QアンドA


電力小売り自由化が
4月からスタート

 4月から電力小売り自由化がスタートします。テレビなどでは、電力会社のみならず、ガス会社や携帯電話会社まで入り乱れて「電気売ります」の大宣伝中。…はて?「電力小売り自由化」とはなんぞや?

 これまで家庭向けの電気は、各地域の電力会社(東京電力や関西電力など)だけが販売しており、電気をどの会社から買うかは選択できませんでした。4月の電力自由化以降は、現在の電力会社だけでなく、新たに参入する電力会社からも電気を購入できるようになります。つまり一般家庭でも「電力会社を選ぶ」ことができるようになるのです。

 といっても、電力供給の物理的な仕組みには、原則変更はありません。電力は、「発電所(部門)」から「送配電部門」に送られ、「小売部門」から消費者、つまり各家庭に届けられます。

 「小売部門」は、消費者と直接やり取りをし、料金メニューの設定や契約手続きなどのサービスを行います。また消費者が必要とするだけの電力を発電部門から調達するのも、この部門の重要な役目です。今回、この小売部門が家庭向けでも自由化され、新たな事業者が自由に参入できるようになったので、一般家庭の消費者も会社を選べるようになった、というわけです(大口消費者は2005年に自由化済み)。

 現在、経産省に登録された小売電気事業者は199者(2月23日現在)。どのような電力会社が参入しているかというと、東京電力、関西電力…といったこれまでの地域の電力会社の他にも、これらの電力会社の子会社、携帯電話会社、ガス会社系、石油会社系、商社系、そして、自治体系や、生協系、市民が立ち上げた再エネ系など、多くの分野の事業者が名乗りをあげています。

 どの会社選ぶ?

 今回、自由化される電力市場の規模は、年間8兆円にものぼるといわれます。現在はこの8兆円の大部分が、東電などの地域の電力会社を通じて、原発や石炭・石油火力発電の燃料となって、産油国や大企業に流れ込んでしまっています。

 でもこれからは、市民も電力会社が選べるようになるわけですから、テレビコマーシャルの大宣伝のように「安さ」だけで選ばず、「原発でない」、環境にやさしい「再生可能エネルギー」で、利益は大企業のもうけになるのではなく、「地域や市民社会に経済循環する」、そんな電力会社を選びたいものです。そう、電力自由化は、エネルギーを通じて、社会を変える第一歩でもあるのです。

 しかし残念ながら、今回の電力小売り自由化には、大きな問題点もたくさんあるのが実情です。では実際、どんな点に気をつけて、どの会社を選べばよいのでしょうか。

(次回に続く)


素朴な疑問 QアンドA

 Q 来月までに何もしないと、電気の供給が止まってしまいますか?

 A 止まりません。現在、供給されている電力会社から引き続き、今までどおり届きます。

 Q 電力会社を変えるには、新たに電線を引き直さなければならいのでしょうか? 停電が起きやすくなりませんか?

 A 今ある送電線を使うので、新たに電線を引く必要はありません。電気そのものの品質もこれまでと同じ。契約した電力会社が電気を調達できなかったとしても、送電線網を管理する会社がその分を補給するので、すぐに電気が止まる心配もありません。

 Q 契約した電気会社が倒産したら、電気が止まってしまいますか?

 A すぐに電気が止まることはありません。別の電力会社を選択して供給してもらうこともできるし、最終的には地域の電力会社(東京電力など)が電気の供給義務を負っているので、ただちに電気がとまってしまうことはありません。

 Q 電力会社を変えるにはどうしたらいいでしょうか? 工事などは必要ですか?

 A 切り替えたいと思う電力会社に連絡します。現在供給を受けている電力会社に連絡する必要はありません。

 スマートメーター(※通信機能を持ち、電気の使用量を遠隔で検針したり、30分ごとの使用量を計測したりできる新しい電気メーターのこと)が未設置の場合は、交換工事する必要があります。スマートメーターへの交換には、原則費用はかかりません(メーター交換に伴う工事に費用がかかる場合がある)。切り替え先の電力会社に申し込んだ後、現在契約している地域の電力会社から交換作業の工事予定日の連絡が入ります。切り替え申し込みが集中した場合、切り替えに時間を要する可能性もあります。

 Q マンションでも切り替えできますか?

 A できます。ただしマンション全体で一括して電気の購入契約をしている場合には制限を受けることもあるので、管理組合などに確認する必要があります。

(新聞「農民」2016.3.14付)
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2016年3月

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