TPP批准阻止、ごり押しは
許さないの世論と運動を
政府は、何年後に発効するか分からない(あるいは発効しないかもしれない)TPP協定を「決着済み」であるかのように言いつくろって、3月中に協定と関連法案を国会に提出し、参院選前の国会批准をねらっています。
しかし、アメリカの動向を見れば、「決着済み」どころか、協定スタートの見通しは立っていません。
大統領候補は「TPP反対一色」
まっただ中の大統領選では、民主・共和両党の上位2候補がそろってTPPに反対するなど、「TPP反対一色」という状況です。
2月22日に生協総研などが主催して国会内で開かれた「TPPフォーラム」では、アメリカ在住の弁護士、トーマス・カトウ氏が、昨年6月の貿易促進権限法採決は下院で過半数を1票上回っただけのきん差だったが、「TPPの不人気ぶりはますます高まっており、通る見込みはほとんどない」と報告しました。
TPP承認法案提出メド立たず
同じ22日、経団連が「TPPを活かす」と題して開いたシンポジウムでは、TPP推進の最右翼である在日米国商工会議所会頭が「大統領選中の承認は難しい。共和党の説得がうまくいけば、オバマ大統領が今年、議会にTPP承認法案を提出できる可能性はある」と報告。つまり、年内批准どころか、年内の承認法案提出のメドすら立っていないことを認めたのです。
オバマ大統領が2月2日、野党・共和党に「早期承認」を要請したものの「審議は11月の選挙が終わってから」「TPP成立には数年かかる」と切り返され、なす術なしという状況です。
TPP否決・崩壊の可能性も
また、選挙後に批准されるかどうかもまったく不透明です。
議会には医薬品データ保護期間、タバコパッケージ、為替操作など、TPP交渉で焦眉になった問題で、不満と再交渉要求が渦巻いており、日本の豚肉価格安定制度の充実に対しても米議会・養豚団体が強硬に反対しています。
議会の再交渉要求は、単なる駆け引きや圧力ではなく、アメリカ独特の憲法体制に裏打ちされたもので、これまでも要求を押し通した実績があります。07年に合意に達した米韓FTA(自由貿易協定)のケースでは、11年に同協定が議会を通過しないことが明白になると、オバマ大統領は議会の要求に従って自動車と農産物に関する追加的な譲歩を韓国に要求し、呑(の)ませました。
しかし、12カ国の駆け引きの末にまとまった“ガラス細工”のような協定に対し、アメリカの一方的な要求を押し通そうとすれば、TPPが崩壊する可能性があります。
TPPごり押しは許されない
共同通信(1月31日)の世論調査では、TPPを「今国会で成立させるべきだ」は21%にすぎず、今国会の承認にこだわらず「慎重に審議するべきだ」「成立させる必要はない」の合計は75%に達しています。
安倍首相は「どこかの国の批准が遅れても、日本が率先して動き、早期発効に向けた機運を高める」と言い張っていますが、TPPは明白な国会決議違反です。また、協定の中身が明らかになるにつれ、TPPが「底無し沼」のような「完全自由化」協定であることがはっきりしてきました。農産物、遺伝子組み換え、医療などなど、アメリカのねらいはもっと強欲であり、TPPは“中間合意”にすぎません。日本が一番乗りで批准するなどというのは、自殺行為であり、アメリカにつけ込まれるだけです。
TPP批准阻止、ごり押しは許さないの世論と運動を強めるときです。
(新聞「農民」2016.3.14付)
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