私も農民連に加入しました
小さな農家に寄り添う姿勢に共感
山梨・北杜市で有機無農薬農業
菅原 文子さん
(故菅原文太さん=俳優=の妻)
2014年11月に亡くなった俳優の故菅原文太さんの妻、文子さんが農民連に加入しました。文太さんの遺志を継ぎ、甲斐駒ケ岳と富士山、八ケ岳を望む山梨県北杜市で有機農業に取り組みながら反戦・反原発運動に積極的に関わっている文子さんにお話を聞きました。
菅原文子(ふみこ)さん 1942年、東京都生まれ。現在、文太さんと開設した「おひさまファーム竜土自然農園」を運営しながら、有機農業を実践しています。
政治を変えるのは私たち
今発言し行動する番です
役立つ農業情報『農民』にあった
――なぜ農民連に?
私は小さな農業を営んでいますが、農業者にとって税金問題は切実です。ネットで調べていると、参考になる情報を発信しているのが農民連でした。なかなかいい情報をだしてくれるなあと。原木しいたけ栽培をやっていますが、原木に補助金が出ることを知らなかった。林野庁など行政は、そういうことをなかなか教えてくれませんでした。一人でやっているとそういう情報は入ってこないのです。
雑誌『農民』を取り寄せ、読んでみると、農業に役立つ情報が書いてあり、レベルも高いと感じました。
もう一つは、小規模農業を大事にし、小さな農家に寄り添う姿勢に共感を覚えました。有機無農薬農業は、小規模でこそできるのです。静岡県藤枝市の無農薬紅茶が好きで、いつも飲んでいましたが、農民連の会員と知って、うれしかったです。
小さな農業こそが日本の景観を守ってきました。私は、「農民」という言葉と「村」という言葉が好きです。
農民連は、誰かがカリスマ的に組織運営や栽培指導をするのでなく、みんなが意見を言い合って決めていくということにも共感を持ちました。農業は一人ではできません。農民連に入って、つながりができたり、情報交換をしたり、みんなで手をつないでいけるところがいいですね。
安全な食料と戦争しないこと
――文太さんも生前、有機農業と反戦・平和活動に力を入れていましたね。
夫は、亡くなる27日前、沖縄県知事選挙での翁長雄志知事への応援演説で、こう言いました。「政治の役割は2つあります。一つは、国民を飢えさせないこと、安全な食べものを食べさせること。もう一つは、絶対に戦争をしないこと」と。
夫が、2009年に、俳優をやめて75歳という年齢で農業を始めた最大の動機は、「有機無農薬農業は欧米に比べて、日本は著しく少ない。それを広げたい」ということでした。これには私も賛成でした。もともと、土のない都会生活は嫌いでしたし、幼いころは、戦後の食料の乏しい時代を過ごしてきました。食糧難の時代が再び来ないとは限らないと、採算は厳しくても安全な有機農業を広げる道を選んだのです。
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原木しいたけを栽培する文子さん |
希望ある社会が私たちの責任
安保法制や米軍基地など、平和の問題では、今の安倍政権に対して、強い拒否感をもっています。憲法9条があることによって、世界から信頼され続けてきたのです。
昨年、沖縄県の米軍普天間基地の名護市辺野古への移設に反対するために、「辺野古基金」の共同代表になりました。
有機農業と反戦・平和の2つに加えて、「よい社会をつくること」をつけ加えたいと思います。
とくに、若者の死因のトップが自殺などという現状は変えなければならない。格差がなく、さまざまな違いを包含し、寛容で、誰もが住みやすい、希望のある社会、そういう社会のある国が、よい国なのです。
社会をよくすることは、主権者である私たちの責任、仕事でもあります。夫の死後、「文太さんにはもっと生きて、発信してほしかった」と、よく言われます。
そうじゃないでしょう。おまかせ民主主義の時代はもう終わりました。あなたが自分で何かをしなければ。あなたが発言し、行動する番ですよ。
そういう意味でも、憲法を改悪し、TPPで農業を壊滅の道に導く安倍政権は選挙で退場してもらいましょう。政治を変えるのは、私たち自身です。野党の連合には、強く期待しています。
みんなを幸福にする
エゴマ栽培ご一緒に
若者への支援をぜひ
――農民連に今後、期待することは。
有機無農薬農業を広めたいという亡夫の遺志を継いで、機能性野菜の栽培を農園の柱にしようと討議を重ねた結果、エゴマ栽培を広めようということになりました。
農民連の会員さんの中で、エゴマの栽培に興味を持つ方がおられたら、ご連絡をいただければと思っています。「エゴマ連合」のようなものをつくり、生産と販売の体制ができればと考えています。「みんなを幸福にする野菜」が合言葉です。
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周りを山々に囲まれた場所で有機農業を営んでいます。写真は八ケ岳 |
農民連のなかに、有機無農薬農業者の仲間を広げ、皆の知恵や経験、人脈を生かしていけば、若い人たちが農業に参入するサポート体制も生まれてくると思います。若い人たちの農業参入への受け入れ、相談、支えになってほしい。そしていつまでも小さな農家に寄り添う姿勢を貫いてほしいと思います。
(新聞「農民」2016.3.14付)
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