「農民」記事データベース20160307-1204-01

やっぱり消費税10%増税は
中止させるしかない

軽減税率・インボイスは
最悪の営農破壊だ!


 安倍首相は、2017年4月には消費税10%への再増税を断行するとともに食料品への「軽減税率」を導入しようとしています。

 「軽減税率」は食料品の8%への据え置きにすぎず、全体で4・4兆円の大増税であり、「軽減」とは、まったくのごまかしです。

 今でも農産物の価格を自分で決められない農家は、消費税を価格に転嫁できません。農家の出荷時には8%で据え置き、仕入れは10%に増税されたら、たまったものではありません。

 生産費をずっと下回る販売価格では、さらに身銭を切ることになります。

 消費税は、赤字でも払わなければならず、まさに営農破壊税です。10%への増税なんてとんでもありません。

 そのうえ「軽減税率」実施に伴いインボイス(適格請求書)制度(注)を導入し、2021年度から義務化する法案が今国会に提出されています。

 インボイス制度は、事業者に過大な事務負担を負わせるとともに、小規模事業者の経営を危機に陥れるものです。

 みんなで力をあわせ、消費税の10%への増税を中止させ、インボイス制度の導入を阻止しましょう。


農民

消費税を価格に転嫁できない

負担はぐっと重くなる一方

 消費税の農家に与える影響を東京農民連会員の橋口博さん(78)=町田市=に聞きました。

 橋口さんが耕作を始めたのは15年ほど前です。いまでは、鶴見川の源流近く、町田市の小山田という多摩丘陵の一角で「小山田クラブ」という生産法人を地元の仲間と作り、市有地を借りて1ヘクタール弱の農地で少量、多品種の野菜生産をしています。

 主な販売先は無人直売所や地元の福祉施設などで、イベント販売や知り合いに手数料を払っての移動販売も行っています。

 「『安い、新鮮、うまい』が売りなので、今でも消費税分を価格に転嫁できていません」と橋口さん。その一方で、「馬ふんと米ぬかで堆肥を作っていますが、米ぬかは購入します。ほかにも肥料やトンネルなどの資材代。山あいなので草刈りの燃料費や鳥獣害対策の資材も必要です。消費税の負担は重くなる一方です」と嘆きます。

 橋口さんの資材代は年間40万円ほどですがそれでも「計算すると、消費税の負担の重さが身に染みます。これが10%に増えると考えるとぞっとして、計算したくなくなってきます。規模が大きい農家ならどれだけの負担増になるのか」と危惧しています。

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「消費税増税で負担は重くなるばかり」と語る橋口さん

 「多摩丘陵にトンネルを掘るリニア計画で、農業が存続できるかどうかの見通しが立たない中で、消費税を増税されたら、ますます希望が持てなくなります。とにかく、農家に負担を強いる消費税そのものをなくしてほしい」と訴えていました。


インボイス導入で直売所は―

事務負担大、仕入れ税額控除できず

 インボイスは、課税事業者しか発行できません。インボイスがなければ仕入れにかかる消費税が控除できなくなります。発行できない農家は取引から排除されるか、消費税分の値引きを求められる危険性もあります。インボイスは免税事業者(課税売り上げ1000万円以下)は発行できません。2015年農業センサスによれば1000万円以下の農家は91%にも及びます。混乱は避けられません。

 直売所への影響はどうか。「生産者の顔が見え、消費者との対面販売でお互いに対話もできる。農産物は新鮮で安全・安心。これが直売所のよさです」

 千葉県の船橋農産物供給センター(印西市)の飯島幸三郎代表理事は、直売所「味菜畑(あじさいばたけ)」で、こう強調します。

 「味菜畑」への出荷者は約70人。そのほとんどが年間売り上げ1000万円以下の小規模な免税事業者です。

 現在、直売所が国に納める消費税は、免税事業者からの仕入れ分も含めて、仕入れ税額控除ができています。

 しかし、インボイス制度が導入されると、直売所が免税事業者から仕入れた農産物の仕入れ税額控除が受けられなくなるおそれがあります。

 こうした農家との取引を継続するには、直売所は免除されている農家の消費税分まで負担しなければならなくなります。それでは経営は続けられない直売所もでてきます。

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インボイス導入は直売所にとっても大きな負担です=船橋農産物供給センターの直売所「味菜畑」

 一方、農家の側は、免税事業者でも届出をすれば課税業者になれるため、消費税を負担し、インボイスを発行して直売所との取引に加わろうとするケースがでてくることも想定されます。

 「毎年、経営が厳しくなるもとで、消費税分の負担に加えて、インボイスの発行で、事務負担もたいへんになり、これで農業をやめようという農家もでてくるのではないか」と飯島代表は危惧します。


  インボイス (適格請求書)=売買する商品それぞれの価格と消費税率、税額を記入する請求書。課税事業者とは、前々年の課税売上高が1000万円を超える事業者または前年までに消費税課税事業者選択届出書を提出した事業者です。軽減税率導入に伴い、2021年度から発行が義務化される法案(所得税法等の一部を改正する法律案)が今国会に提出されています。

(新聞「農民」2016.3.7付)
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2016年3月

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