「農民」記事データベース20160222-1202-01

TPPは徹底した農業破壊の協定

「除外」規定は存在せず
全品目が関税撤廃の対象に

農民連国際部副部長岡崎衆史さんの報告
テキスト分析で明らかに

関連/アメリカ農務省の見解

画像  TPPは日本を後戻りできないさらに全面的な関税撤廃の道に進ませる仕組みを持つことが協定文の分析で明らかになりました。分析をしたのはTPPに反対する市民団体のチーム。2月5日に都内で報告会が行われ、農産物市場アクセスを担当したのは農民連の岡崎衆史国際部副部長です。


さらなる撤廃圧力は必至

 政府は「例外」を確保したというが…

 政府は、関税撤廃の「例外」を確保できたと自賛していますが、今回関税撤廃を約束しなかった443品目(全て農林水産品)も将来的には撤廃を迫られることになります。TPPには「除外」(関税の撤廃・削減の対象としない)規定が存在しないためです。政府の言う「例外」品目は、今後、関税撤廃に向けた協議の対象となります。

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「TPP協定の全体像とその問題点」の報告集会=2月5日、都内

 アメリカ通商代表部(USTR)傘下の「貿易のための農業諮問委員会」は「どの物品も除外されなかった」ことを勝ち誇っています。除外や再協議(関税撤廃・削減義務の取り扱いを将来に先送りすること)の対象となる品目は、これまで日本が結んできたすべてのEPA(経済連携協定)には含まれてきました。TPPに関する国会決議が求めたのも、重要品目を「除外」「再協議」とすることでした。

 撤廃に向けた仕組み盛り込む

 TPP協定のもとで、日本は、協定発効から7年後にアメリカなど農産物輸出国5カ国との間で関税、関税割り当て、セーフガードに関する見直しの協議をしなければなりません。除外規定がなく、「市場アクセスを増大させる観点から」見直しを行うことが義務付けられているため、さらなる関税撤廃を押し付けられることは必至です。

 関税撤廃を決めた品目の撤廃時期の繰り上げについても、発効した年から要求があれば協議に応じなければなりません。

 農産物市場アクセスを拡大するための仕組みはほかにも存在します。物品市場アクセスを拡大するために物品貿易に関する小委員会を設置し、さらに農産物市場アクセスを拡大するための「農業貿易に関する小委員会」を特別に設けます。

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TPP調印に抗議してアメリカ・シアトルで行われたデモ(2月3日、フラッシュ・ザ・TPP!のウェブサイトから)

 GM農水産物の安全性を無視

 遺伝子組み換え(GM)農水産物の貿易を促進するため、各国の制度の透明性の確保、協力、情報交換を進めるための条項も盛り込まれ、作業部会が設置されます。これが農産物市場アクセスの項目にあるため、GM食品の表示規則の緩和など、GM農産物の貿易拡大のためのルールづくりが、安全性を無視し、アメリカなどの輸出国主導で行われる危険があります。

 農業貿易に関する小委員会も、GM農水産物貿易の条項も、日本がこれまで結んだEPAにはなかったもの。GM農産物の貿易の条項は、アメリカが結んだ貿易協定にも存在しません。

 アメリカ農務省はGM条項について、(1)意思決定の透明性の促進、(2)微量混入の際に貿易の中断を避けるための協力、(3)遺伝子組み換え農水産品の時宜にかなった承認を締約国に約束させると称賛しています(別項)

 セーフガードの発動権利を奪う

 一方、輸入が急増したときに一時的に関税を引き上げるセーフガード措置を発動する権利は奪われることになります。TPPでは、WTO(世界貿易機関)が農産物に対して認める特別セーフガードを発動できなくなります。

 他方で、TPPが新たに設置する農産物の品目別セーフガードは、いずれも期限がきたら廃止となる仕組みになっています。7年後の5カ国との見直し協議の対象には、セーフガードも含まれているため、改悪の恐れもあります。

 USTRは、TPPの概要説明で、アジア太平洋地域の中間層が2030年には32億人に達し、農産物の「世界最大の購買者となる」と指摘。この地域を「長期にわたるアメリカの成長基盤」にするため、農産物市場を支配する意図を公言しています。


TPPのGM農水産物の条項

アメリカ農務省の見解

 アメリカ農務省はTPPの遺伝子組み換え農水産物の条項を次のように要約しています。

 「TPPは、遺伝子組み換え(農業バイオテクノロジー)の項目を米国のFTAに初めて盛り込んだ。TPP協定は、遺伝子組み換え技術が、増大する世界の人口に持続可能な方法で食料を供給する重要な手段であることを認めるとともに、意思決定プロセスの透明性の促進、微量混入の際の協力、遺伝子組み換え生産品の時宜にかなった承認の促進をTPP諸国に約束させる条項を盛り込んでいる。また、遺伝子組み換え生産品の貿易に関する事項に対処する任意の作業部会を創設する」

(新聞「農民」2016.2.22付)
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2016年2月

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