甘利TPP・経済再生担当大臣が辞任
甘利氏に2つの疑惑あり
口利き・金銭授受疑惑
TPP交渉“売国”疑惑
国益投げ捨て、私利私欲
こんな大臣が進めたTPP協定は許せない
甘利明TPP・経済再生担当大臣や秘書が千葉県の建設会社から、総額1200万円もの現金供与と接待を受けていた疑惑で、甘利氏は1月28日、自ら現金を受け取っていたことを認めたうえで、閣僚を辞任しました。
甘利氏には二つの疑惑があります。政治と金をめぐる疑惑とともに、安倍首相と共謀して国益を売り渡すTPP交渉を進めてきた“売国疑惑”です。安倍政権の中枢として悪政推進に“活躍”してきた甘利氏の辞任で幕引きが許されるはずはなく、二つの疑惑の真相解明と安倍首相の任命責任が問われます。
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参院決算委員会で答弁する甘利氏=1月21日 |
●甘利氏の“口利き・献金疑惑”
千葉県の建設会社と独立行政法人・都市再生機構(UR)との道路用地買収をめぐるトラブルを解決するため、2013年から建設会社の依頼を受けて甘利氏の公設秘書や地元事務所が補償交渉に介入し、2億2000万円の補償金を手に入れた業者から見返りに総額1200万円もの現金供与と接待を受けていた疑惑を1月21日発売の『週刊文春』が報道しました。
重大なのは甘利氏自身の関与で、業者と直接会ってトラブルについて説明を受け、13年11月に大臣室、14年2月には神奈川県内の事務所で、現金50万円ずつ計100万円を直接受け取ったと報じられました。
甘利氏は当初、国会答弁などで業者と会ったことは認めたものの、現金の受け取りについては「記憶があいまいだ」と述べ、1週間にわたって「記憶の整理」をした末に、28日の会見で、自らが合計100万円を受け取ったことを認めました。
「古典的とも言える口利き」「絵に描いたようなあっせん利得」(郷原信郎弁護士=元検事)の疑いについては「ないと思う」と弱々しく否定し、現金を「スーツの内ポケットにしまった」との『週刊文春』の記述については、菓子箱と一緒に袋に入っていた封筒に気付いていながら、大臣室などで現金をあっさり受け取り、秘書に処理を指示するだけにとどまったことを認めました。「重要なのは内ポケットかどうかではない」(日経社説)のです。
「建設会社に、URが約2億2千万円の補償金を支払う契約が成立したのは、当時の秘書とUR職員が初めて面談した約2カ月後の2013年8月だったことが29日、URなどへの取材で分かった。現金授受が始まったのも同月からだった」(共同通信)
●金集めとTPP譲歩に「全身全霊」?
甘利氏は記者会見で、涙目になって「アベノミクスの司令塔としての責務を果たし、TPP交渉の推進のために、舌がんの病床にあっても、命がけ、全身全霊で取り組んできた」と自賛しました。また実際には「秘書が、秘書が」と言いながら、「秘書に責任転嫁するようなことはできない。それは、私の政治家としての美学、生きざまに反する」と大見えを切りました。
はたしてそうか?
表から明らかなように、今回の献金疑惑はTPP交渉が重大な局面を迎えていた時期に集中しています。秘書が500万円を受け取った13年8月は、日本政府がTPP交渉に参加して初めて本格的に閣僚会合に出席した時期。甘利氏が大臣室で50万円を受け取った11月は、アメリカが米輸入で攻勢を強め、日本政府が妥協案を検討していた時期です。
甘利氏が二度目に50万円を受け取った14年2月は、4月のオバマ大統領来日を目前にして、とくに牛肉・豚肉の大幅な関税引き下げを秘密裏に交渉していた時で、2月15日にはフロマン米通商代表に呼びつけられて甘利氏が急きょ訪米し、22〜25日の閣僚会合に向けて日米間の落とし所を談合した時期です。金集めとTPP譲歩に「全身全霊」を傾けたというべきです。
●“売国疑惑”の言動、数々
甘利氏はフロマン米通商代表との「徹夜交渉」を演出するかたわら、節目節目で売国的譲歩を繰り返してきました。
たとえば、14年4月のオバマ大統領来日で成立した“密約”を表に出し、交渉を前に進めなければならなかった9月には「日本としてギリギリどこまで歩み寄れるか真剣に考えてくれと事務方に再び指示した」(9月23日からの日米閣僚会議を前に。14年9月19日)と述べていました。
さらに、牛肉・豚肉の大幅な関税引き下げが水面下で決着し、本丸の米が焦点になっていた15年1月には「アメリカ米の輸入を『1粒も増やさないということは不可能だ』」(1月27日)とイラだちまじりに会見などなど。
●TPP国会承認は許さない
「3A+1S」(安倍、甘利、麻生、菅)。第2次安倍政権発足以降、任期途中で閣僚を辞任したのは、小渕優子経済産業相、松島みどり法相、西川公也農林水産相に続き4人目ですが、「甘利氏はこれまでとはあらゆる意味で格が違う」(自民党中堅議員)といわれる通り、甘利氏の辞任は政権の屋台骨をゆるがすものにならざるをえません。
加えて、秘密交渉のツケで「甘利氏以外に(TPP交渉について)答弁できる者はいない」(自民党幹部)といわれる実態です。国会審議では、日本政府がいつ、どういう機会に“売国カード”を切ったのか、“売国疑惑”の実態を徹底的に明らかにする必要がありますが、閣僚経験があるとはいえ、TPPについてはシロウトの石原伸晃新大臣のもとで、審議が混乱状態に陥る可能性大です。
戦争法廃止、TPP国会承認は許さない、消費税10%への増税は許さないなどの声と運動を大きくし、甘利氏辞任を安倍政権の終わりの始まりにするときです。
(新聞「農民」2016.2.8付)
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