WTO対抗行動に参加して
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農民連国際部 岡崎衆史副部長のリポート
WTOは植民地時代に逆戻り
ビア・カンペシーナ
討論会では鋭い告発が次々
「WTO(世界貿易機関)はわれわれ民衆を植民地時代に逆戻りさせた」―。WTO閣僚会議(2015年12月、ケニア・ナイロビ)開催に伴う国際農民組織ビア・カンペシーナ主催の討論会で司会を務めたケニアのNGO活動家、シディ・オティエノさんが声を張り上げました。
多国籍企業に怒り
WTOや東南部アフリカ市場共同体(COMESA)を通じた自由化の流れで、多国籍企業が主要農産物のコーヒー、茶、砂糖などを支配し、生産者を搾取していると告発。「良質のものは輸出され、民衆は質の劣る産物しか口にできない」と怒りました。
討論会ではケニアの男女が次々と発言。食料や水を手にする権利が憲法上認められているにもかかわらず、多国籍企業による農産物支配や安い輸入農産物の殺到によって、権利が現実には保障されていないと批判する発言が相次ぎました。
一方、インドの農民は、多国籍企業による種子や農薬の支配による借金苦のため、WTO設立の1995年以来、30万人が自殺したと警鐘を鳴らしました。特に、遺伝子組み換え綿花を導入するため借金をした農家が、返済不能になり自殺するケースが多いといいます。
討論会にはアメリカやヨーロッパの農民代表も参加。全米家族農家連合(NFFC)のバーケット会長は、ニュージーランドからのラム肉やブラジルからの大豆など安い輸入農産物が何世代も続く農家を離農に追いやっていると警告。「WTOと自由貿易協定は世界で家族農家を駆逐している」と訴えました。
TPP闘争を報告
農民連から私(岡崎)が発言し、WTO体制下での農産物輸入増加のため、日本では、農村の荒廃が進み、農家戸数が95年以降130万戸減少したことなどを指摘。また、WTOよりもいっそう悪質なTPPが「大筋合意」になり、さらに徹底した農業破壊がもたらされようとする中、農民をはじめ多くの国民がTPP阻止の新たなたたかいを進めつつあることを紹介しました。
討論会で参加者はWTOと自由貿易協定とのたたかいをさらに強めていくことを確認しました。
3日連続抗議デモ
ビア・カンペシーナとケニアのNGOは、地元メディア向けの共同記者会見も実施。3日連続でWTO閣僚会議の会場前まで抗議デモも行い、プラカードや横断幕で通行人やメディアにWTO体制の転換を求めるアピールをしました。
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WTO閣僚会議会場に向けデモ行進する人々(ナイロビ市内) |
デモの写真を地元紙が1面に掲載。インドなど外国のメディアも行動を取り上げました。
(おわり)
(新聞「農民」2016.2.1付)
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