消費者が選べる遺伝子
組み換え食品表示めざし
国際シンポでの2代表の報告(要旨)
食品表示を考える市民ネットワークなどは11月21日、都内で国際シンポジウム「消費者が選べる遺伝子組み換え食品表示をめざして」を開催しました。遺伝子組み換え(GM)表示はどうなっているのか、表示を求める運動の到達点など、アメリカと韓国の代表が報告しました。その要旨を紹介します。
アメリカ
GM食品表示の義務なし
表示義務化求め各州で運動
米国食品安全センター
上級弁護士
ジョージ・キンブレルさん
アメリカには、遺伝子組み換え表示制度はありません。1992年、米国食品医薬品局(FDA)は、遺伝子組み換えは、非GM食品との間で、食品表示に必要な「重要」な差異がないとの理由で表示は必要ないとの方針を打ち出しました。
これは、「重要」の定義を味、におい、その他人の感覚で判別できる差異に限定しており、科学的な理由ではありません。
2000年にFDAは、自発的にGM表示をできると発表しましたが、GM原材料を製品から除外した企業は、厳しい規制に縛られます。こうして自発的に表示している企業はゼロです。
しかし、国民は世論調査で、10人に9人はGM表示が欲しいと回答し、GM魚や肉は販売されるべきではないと思っています。
米国全土でみると、11年に、知る権利を求めた請願活動を展開し、150万人以上が支持し、署名しました。
こうしてGM表示を義務化した州法が3州(バーモント、コネチカット、メーン)で可決されています。
12年にカリフォルニア、13年にワシントン、14年にオレゴンの各州でGM表示を求める住民投票が行われましたが、いずれもきん差で表示賛成派が敗れています。反対派は、反対運動に賛成派の5倍以上の拠出金を提供し、マスメディアも総動員して、表示つぶしに躍起です。
さらに今年に入って、国民の知る権利を奪い、州法をないがしろにする連邦法(DARK法)が7月に下院を通過し、上院で審議中です。
また、ハワイ、オレゴン各州では、GM作物の利用を規制または禁止する条例を制定し、カリフォルニア州では郡が禁止令を出しています。
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討論するキンブレルさん(左から2人目)とイさん(その右) |
韓国
原料中3%以下は非表示
表示対象拡大めざし共同進む
韓国GMO反対生命運動連帯
執行委員長
農漁村社会研究所所長
イ・ジェウクさん
韓国のGM表示制度は、2001年に始まりました。表示対象品目は、豆、とうもろこし、豆もやし、ジャガイモ、綿実、ナタネ、テンサイ(7種)など国内で承認されたすべてのGM農産物とこれを原料にした豆腐類、豆の粉、とうもろこし粉などのような加工食品です。
表示しなくてもよいのは、(1)食品製造過程でたんぱく質が破壊され、遺伝子組み換えDNAが発見されない場合、(2)食品の原材料比率が上位5位までの品目に入っていない場合、(3)原料中GM原料が3%以下である場合は、非意図的な混入と認定して除外しています。
その後、08年に表示対象の範囲を拡大する改定案が公示されましたが、その検討は遅延状態にあります。
韓国には、大きく分けて2つの反GMO(遺伝子組み換え作物)運動の流れがあります。一つは、GM農産物や加工食品が韓国で実験、試験栽培、生産、輸入、流通、販売、消費されることに反対するグループです。代表的な団体が、遺伝子組み換え食品反対生命運動連帯で、ここには、農民団体など生産者団体、生協など生産者と連携している消費者団体、そして研究所、出版社、地域団体、劇団などが参加しています。
もう一つは、「消費者問題を考える市民の会」や経済正義実践市民連合という団体の傘下にある「消費者正義センター」という団体です。
2つの団体は、消費者の知る権利を充足させる「表示制度」の改善のためにより多くの努力を重ねています。最近では、「GM表示制度の強化」に力を集中しています。
(新聞「農民」2015.12.21付)
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