「農民」記事データベース20151221-1195-02

TPP

欠陥だらけ・危険・大混乱
交渉で圧力は際限なく続く


調印・批准ストップ
フォーラム

 各分野から18人がよびかけ人となって、「検証TPP―全国フォーラム」が12月9日、参議院議員会館講堂で開催され、320人を超える参加者が集いました。よびかけ人からの問題提起を「TPPに反対する弁護士ネットワーク」の中野和子事務局長が行い、「TPPは、国民にとって利益がなく、問題の多い協定。よく検証しましょう」と呼びかけました。

 1兆円を超える農業生産減少額

 第1部は、「TPP『合意』を検証する」。5人が報告しました。「TPP阻止国民会議」の首藤信彦事務局長は、協定案について、「あいまいで先送り、協議事項が多く、欠陥だらけだ。万が一発効すれば、その後の大混乱は必至だ」と述べました。

 農民連の真嶋良孝副会長は、TPPによる生産減少額は「少なく見積もっても1兆円を超える」と述べ、米、小麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の5品目について、合意内容や関税撤廃率をみても、「国会決議違反は明らかだ。日豪FTA(自由貿易協定)よりも悪い内容になっている」と批判しました。

 さらに「自由化交渉はこれで終わりではない。圧力は際限なく続く」と語り、政府が売り物にする「輸出」についても、「2020年の目標1兆円のうち農産物は1000億円程度にすぎず、幻想でしかない」と反論しました。

 「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の醍醐聰・東大名誉教授は、医療への影響について話し、医療特許の対象が「人間を手術・治療・診断する方法を『産業利用することができる発明』とみなす」と、営利化の方向が打ち出されていることを指摘しました。

 消費者の利益奪われる恐れ

 「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」の岩月浩二弁護士は、TPP「暫定文案」にみるISD(投資家対国家紛争解決)条項について報告。裁判そのものがISD条項から除外されなかったことで、日本の裁判自体が、ISD提訴の対象となる危険性を語りました。

 明治大学兼任講師で日本消費者連盟の山浦康明前共同代表は、食の安全がどうなるかについて解説。協定案第2章では、「輸入時に遺伝子組み換え作物のコンタミネーション(混入)が存在した場合など、問題解決のために作業部会を設置することを含め、情報交換のための作業部会を置く」と規定していることを紹介し、「実際の構成、権能によっては事業者の利益が優先され、消費者の利益が奪われる恐れがある」と分析しました。

 また、第8章の「貿易の技術的障害(TBT)措置」で、「透明性の確保」との表現で各国の食品表示基準の策定に海外の利害関係者が関与できるしくみが導入される危険性を指摘しました。

 国会論戦に向け阻止世論を強く

 第2部のテーマは「TPP協定の調印・批准を止めるために」。アジア太平洋資料センターの内田聖子事務局長は、協定案のテキスト問題で発言し、日本語は正文でなく、日本政府が公開した日本語訳は全体の10分の1程度だと批判。市民団体が「テキスト分析チーム」を作り、冷静な分析と影響評価を行っていることを紹介しました。

 さらに、今後、国内では、専門家や市民組織の分析を力にしながら、国会論戦に向けて国会内外で動きをつくる必要性を訴えました。

(新聞「農民」2015.12.21付)
ライン

2015年12月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2015, 農民運動全国連合会