「農民」記事データベース20151221-1195-01

農民連食品分析センター20周年

新分析機器導入募金にご協力を

残留農薬・遺伝子組み換え分析をパワーアップ

関連/日本での食糧主権を求めるたたかいに不可欠なセンター
  /休刊のお知らせと新年号のお届け


分析力を強化し生産と
食の安全・安心を守ります

2015年12月
農民運動全国連合会会長 白石 淳一
農民連食品分析センター所長  八田 純人

 いま世界では、TPPやFTA(自由貿易協定)など経済性と効率化、企業のもうけのみを追求する強権的な貿易システムが推し進められようとしています。日本政府は、この流れに乗じて食料自給の基盤を突き崩し、さらなる輸入拡大に舵(かじ)を切ろうとしています。

 1996年、農民連食品分析センターは、増加する輸入食品の実態を科学的に明らかにし、「国民の命と健康を守る砦」をめざして設立されました。設立以来、輸入食品の様々な問題を明らかにし、日本の食品衛生行政を前進させる活動を行ってきました。輸入野菜などの残留農薬、遺伝子組み換え作物の自生調査活動、東電福島第一原発事故による放射性物質汚染検査など、様々な分野で新たなデータを明らかにしてきました。

画像  中国産冷凍ほうれん草の残留農薬の告発は、政府に輸入加工食品の残留農薬基準を作らせる契機となり、農薬の「一律基準」(ポジティブリスト制)の導入につながりました。

 これらの成果は、日本の農業の現状を憂い、食の安全・安心に思いを寄せる多くの方の募金で配備した分析機器なくしてはなしえませんでした。

 いま、勢いを強めつつある輸入攻勢と、食の安全対策の後退に立ち向かうためには、安全・安心できる生産を広げることが不可欠です。同時に、残留農薬検査や遺伝子組み換えの分析力を飛躍的に強化することは待ったなしです。

 残念ながらこれまで配備してきた分析機器では力不足であり、高性能な分析機器の導入が求められます。

 この度、農民連食品分析センター20周年を機会に、分析力をさらに強化するための「農民連食品分析センター強化3000万円募金」を呼びかけることにしました。みなさんのご協力を心から訴えます。

 導入を計画している機器について

   (1)高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS/MS)
 現在、稼働している残留農薬分析装置ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)は、有機リン系、有機塩素系、ピレスロイド系農薬など、油に溶け、気化しやすいタイプの農薬230種程度の検査が可能ですが、水に溶けやすく、気化しにくいタイプの農薬には対応できません。

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高速液体クロマトグラフ質量分析計

 LC/MS/MSが導入されれば、ネオニコチノイド系農薬をはじめ、大幅に検査できる農薬を増やすことができます。

   (2)遺伝子組み換え作物検査装置(リアルタイムPCR装置)
 1999年に導入した遺伝子組み換え検査装置は、食品への表示義務制度がまだなかった当時、スナック菓子などの分析を行い、表示義務制度導入の後押しとなりました。

 また、輸送中にこぼれ落ちる遺伝子組み換え種子が生物多様性に与える影響調査にも役立ってきました。これらのデータは、生物多様性条約締約国会議に情報提供し、成果を上げています。しかし、今ある分析装置は、混入率までは確認できません。今回、導入する装置は、蛍光検出法を用いて混入率の測定が可能です。

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遺伝子組み換え作物検査装置

 現在の遺伝子組み換え作物の表示は、混入率5%以下であれば「遺伝子組み換えでない」と表示できることになっています。新たな装置の導入によって、遺伝子組み換え食品の実態を検証することができます。

 分析センターの活動支援

 今後、食品分析センターは、多くの分析依頼に応えるだけでなく、本格的に輸入農産物やその加工食品を購入、分析して結果を広く公表する活動を飛躍的に拡大する方針です。そのためには、検体の購入や分析の費用を、分析センターがみずからねん出せざるをえません。今回の募金は、こうした活動の支えとしても活用させていただきます。

 今回の募金には、「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」代表の天笠啓祐さん、新日本婦人の会会長の笠井貴美代さん、全労連議長の小田川義和さんも協力を呼びかけています。

 分析機器導入募金振込先
 郵便振替口座
 口座番号 00160―6―773542
 加入者名 農民運動全国連合会分析センター


日本での食糧主権を求める
たたかいに不可欠なセンター

ビア・カンペシーナ国際調整委員
ヘンリー・サラギ

画像  私は光栄にもこれまで2度、農民連食品分析センターを訪問する機会を持ちました。農民連の人々に日本やその他の国で会うときにはいつも、分析センターが現在どんな状況にあるのか、聞いてきました。私たち農民は、有毒な化学物質から自らの生産物の安全性を確保し、健康に良いものにしたいと願っているのです。

 私たちは自由市場の時代のただ中におり、日本は、世界中で食料の市場開放を進める貿易自由化の最前線に位置しています。そうした中でも、食品分析センターは、私たちの食料、日々の糧を安全なものにする上で、今日はるかに大きな存在感を発揮し、今後もさらに増大させていくでしょう。

 食品分析センターは、日本での食糧主権を求めるたたかいの不可欠な構成要素であり、世界の様々な地域の他の多くの食糧主権を求めるたたかいとともに前進していくものと確信しています。

インドネシア農民組合(SPI)組合長


休刊のお知らせと新年号のお届け
 次号の12月28日付は休刊にします。
 次週は2016年1月4日・11日付合併号(新年号)を1週間早くお届けし、年末年始にあたる次々週の配達はありませんのでご了承ください。(新聞「農民」編集部)

(新聞「農民」2015.12.21付)
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2015年12月

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