「農民」記事データベース20151214-1194-10

GM表示義務のない糖類
ビール4社 分別せず使用

 政府は、「TPPで食の安全は守られる。遺伝子組み換え(GM)表示が変わることはない」と主張していますが、実際には今、私たちの食卓にGM食品・飲料がじわりと忍び寄ってきています。また、TPP協定案でも、GM作物の貿易を推進しかねない内容が盛り込まれています。


 遺伝子組み換え使用を公開質問

 「たねと食とひと@フォーラム」は10月2日、大手ビール会社4社(アサヒ、キリン、サッポロ、サントリー)に対して、ビール、発泡酒、第3のビール、ソフトドリンクの原材料として使われているコーン・スターチや糖類が遺伝子組み換えのものかどうかの公開質問を行い、4社から回答が寄せられました。

 回答結果は表の通りです。

 今のところ、コーン・スターチについては、遺伝子組み換えでないものが使われていますが、糖類については、昨年に比べ、「不分別」つまり「遺伝子組み換え農産物とそうでない農産物を分別せずに使っている」ものを4社とも使用しているという結果でした。

 今年に入って、糖類を使った「発泡酒」や「第3のビール」にGMとうもろこし由来の原料(液糖)が混じっている可能性があります。

 理由は、「非遺伝子組み換えのものを調達するのが難しく、安定供給のため」となっています。

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各社の第3のビール

 業界でのGM化さらに進む恐れ

 同フォーラムの西分千秋共同代表の話

 日本の食品業界では遺伝子組み換え(GM)表示義務のない糖類を中心に、大きくGM化(不分別化)が進み、非遺伝子組み換えとうもろこしの需要は少しずつ減っています。その中で、ビール業界は、原料を非GMとする方針を維持してきました。

 しかし、公開質問の結果により、2015年からビールや発泡酒に使われる糖類に遺伝子組み換えの可能性が増えたことは残念です。

 このビール業界の動きによって、今後、年間で約30万トン(3割弱)の非GMとうもろこしの需要が減少すると予想されます。

 ビールメーカー向け糖化製品がGM化することによって、非GMとうもろこしの取り扱いコストが増大することが予想され、輸入業界、製造業界で非GM方針の「維持か撤退」かの二者択一が迫られ、業界でのGM化がさらに進むおそれがあります。

 また、糖類を使っている他の食品についても、遺伝子組み換えのものが使われている可能性があります。

 GM作物由来で表示義務のない商品でも、「消費者が選択できる表示ルール」を確立することが求められます。


アメリカでGMサケを食品に認可

GM動物の認可は初
生態系などに悪影響

 米食品医薬品局(FDA)は11月19日、遺伝子を組み換えたサケ(GMサケ)を食品として認可しました。

 アメリカのベンチャー企業「アクアバウンティ・テクノロジーズ社」が開発したGMサケは、タイセイヨウサケの遺伝子を組み換えて成長の速度を速め、食卓に上るまでの時間を短縮できるようにしたものです。遺伝子を組み換えた動物が食品として認可されたのは初めて。

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上が遺伝子組み換えサケ。下が普通のサケ

 食べても安全と判断したけど…

 FDAは、承認に必要な基準はすべて満たしていると認定し、「このサケを使った料理を食べても安全」と判断しました。

 FDAは、遺伝子を組み換えていないサケとの間に生物学的な違いはないと認定し、このためアメリカでは、遺伝子組み換えのラベル表示は義務付けられません。

 GMサケは、キングサーモンの成長遺伝子と「ゲンゲ」というウナギに似た魚の遺伝物質を組み合わせた遺伝子を、タイセイヨウサケの卵に注入して誕生させたもの。養殖はカナダとパナマにある2カ所の施設でのみ許可されます。

 魚は動き回るので、養殖場に完全に封じ込めるのは困難です。各地で養殖されることになれば環境中に逃げだすリスクを高めることになります。

 GMサケに繁殖能力はなく、大量に逃げ出すと、将来的にはサケの絶滅をもたらす可能性があります。また、サケが他の魚を食い荒らすことによって、生態系を壊し、希少種の魚が失われるおそれもあります。

 表示されるかシャケおにぎり

 『サルでもわかるTPP』著者の安田美絵さん(ルナ・オーガニック・インスティテュート代表)は、次のように指摘します。

 「日本では、『組み換えられたDNAやそれによって生成したタンパク質が含まれる食品』には表示義務があるので、切り身やサケ缶、あるいは丸ごと一匹のサケを販売する場合には、必ず表示がされることになります。しかし、『主な原材料(原材料の上位3番目以内で、重量の5%以上)にしか表示義務がない』という決まりもあるため、コンビニなどのシャケおにぎりには表示されるかどうかわかりません。また、外食には表示義務がないため、要注意です」

(新聞「農民」2015.12.14付)
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2015年12月

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